

写し絵
「あれ、、使い切っていたか」
夕食の準備に取り掛かった紅響は手を止めた。
元々余らせるのは性に合わずストックは少なくしていたが、改めて見ると見事に無い。
「さすがに、、、これは」
今から市場に向かうとなるといつもより遅くはなるが、一緒に暮らしているフィエラも今日は仕事が遅くなると言っていた。
それならば、今からでも支障は無いだろうと判断し、紅響は市場へ向かった。
すでに空は夜の色。
この空は、かって己が暮らしていた地にも続くのだろうか。
そんなことを思いながら歩いていると
わき道から駆け出してきた誰かとぶつかった。
「申し訳ありません。怪我は」
「いっ、、た、、、」
相手が上げた顔を見た瞬間、紅響は息が止まるかと思った。
いや、一瞬止まったかもしれない。
「しつこいな、、。あ、ごめん、来て」
「え?あの」
相手は紅響の腕を引き、わき道の暗がりへ入る。そして
「な、何を?!」
不意に抱きつき、顔を隠すように寄り添うた。
訳が分からず、紅響は硬直状態だった。
その先の大通りから、バタバタと数人の足音が駆け抜けていった。
その音が聞こえなくなってようやく相手は顔を上げた。
「行ったか。ありがとう、助かったよ」
「、、、、、」
「えっと、、大丈夫?」
二重の驚きで紅響は呆然と相手を見つめるだけだった。
「、、、、、」
「あの、、聞こえてる?」
目の前で揺れた手でようやく我に返る。
「いったい、、何、、あ、あなたは」
「驚かせてごめんね。僕はカーネリア」
「カーネリア、、、」
紅響はその名前を呟いた。そして、こんな言葉が漏れていた。
「藤樺、、ではない」
そう、目の前にいる相手は
かつて同じ地で暮らした同胞にそっくりなのだ。
まじまじと自分を見る紅響にカーネリアはくすりと笑った。
「その人、そんなに僕に似てるんだ。
人違いで悪いけど、僕はカーネリア」
「そう、、ですか。失礼しました」
「あなたが謝ることじゃないと思うけど。ね、名前聞いていい」
「わたくし、紅響と申します」
「紅響さんね。ところで{銀月}っていうお店知らないかな。
この通りにあるって聞いてたんだけど」
「画廊のことでしょうか。でしたら通り道ですのでご一緒しましょうか」
「ほんと?助かるよ。あいつらに見つかるとうるさいから。行こう」