夢使い


一方のサイファとセルジュ。

「ひとりで住んでるのかい?」

「ああ」

サイファは羽ばたきソファーに乗った。

まだ二度目だが
他に人がいる様子は感じられない。

しかし、並ぶ家具はセルジュに丁度いいサイズで
逆にいえばサイファには余る。

失った誰かがいるのだろうか。

「1つ訊いていいかな」

「何だ」

セルジュは隣に座った。

「あの時、二度と使うつもりは無いと言ったね。
 使いたくないから、閉ざした道の向こうで眠っていた。
 夢使いとして、辛いことがあったのかと思って」

「訊いてどうする」

「道を開いたのは私だ。
 眠りを醒ましたこと、後悔はしていないけど
 力を使うことで辛い想いをさせたなら
 何か、君に対して出来ないかと思ってるんだ」

「鍵の守護者か。そっちはどうなんだ」

「今まで鍵の守護者として求められたのは一度きり。
 辛い想いはしないですんだ。傷を負いはしたけどね」

目には見えないけれど
他にはない力がこの手にはある。

託された願いが強ければ強いほど
時にそれは鋭い刃となり、己に返ってきた。

「せめて夢の中でいいから会いたい。届けたい。
 そんな願いを託された。夢を繋ぐことはできる。
 だが、繋がった結果まで操れるわけじゃない。
 夢の中で会ったは相手は、違う誰かを想っていた。
 あんな夢なら会いに行くんじゃなかった。
 どうしてあんな夢を見せた。
 それを私に言われたところで何もできない。
 私は、自分の出来ることをしたまで」

「、、、、、」

「そんな連中が多すぎただけだ」

「そうか、、、、」

望みを叶えた結果恨まれたのでは
誰であっても嫌になるだろう。

サイファが眠りを求めたのも、わからなくはない。

しかし、全てが同じではなかったはず。

少なくとも今回はリシュナを救い
同時にアズライルをも救ったのだ。

「辛いことがあったのは事実だろう。
 でも、君にしか救えない人がいるのも事実だ」

「私が救う?」

「少なくとも
 今回はリシュナ殿と精霊王を助けたじゃないか。
 私からも、礼を言わせてもらうよ」

「宮でも言っただろう。自分の仕事をしただけだ。
 礼を求めるつもりはないし
 私に対して何かをする必要もない」

(時間がかかるのは仕方ないか)

素直に他者を受け入れるには
時間が必要かもしれない。

だが、生きていくのなら人は他の誰かに手を伸ばす。

「ひとまず夢使いということは抜きにして
 せっかく知り合えたことだし
 時々付き合ってくれると嬉しいだけどな」

「何にだ」

「まあ、お茶とか」

「どうして、そこまでかまう」

「独りにしたくないからだよ、君を」

「、、、、、」

「辛い想いをしてきたのなら、その分
 楽しみや喜びを知る権利がある。
 独りでは気がつかない事も
 別の誰かがいれば、気がつくかもしれないだろう」

「おせっかいだな」

「これも性分だから」

「いつその気になるか、わからないぞ」

「いつでも。無理をさせるつもりはないよ」

以前、隣に誰かがいたのは何時だったろう。

今のこの感覚を、サイファは嫌とは思わなかった。

ひとまず拒絶ではないことに、セルジュは胸をなでおろす。

「それじゃ、今日はこれで」

「ん、、、またな」

セルジュを送り出たサイファは、大きく息をついた。

眠る前とこれからとが変わるかは、わからない。

けれど、夢使いとしての力が誰かを救えるなら
夢使いの自分が存在することにも意味があるだろう。

(未来なんて予測不可能。なるようになれ、か)

時の流れは川のように人を運ぶ。

己を委ねるように、サイファはゆっくり目を閉じた。








 












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