夢使い


道を進み暫くすると、ひらけた場所に出た。

そして、小さな身体が横たわっていた。

「あれがそうか」

セルジュは近づいた。

「まだ、、、、子供?」

身の丈はセルジュの足くらいだろうか。

静かに抱き起こす。

「しっかり。目を開けてください」

「ん、、、っ、、、」

「サイファ」

呼びかけに、ぴくりと身体が動いた。

「、、誰だ、、、呼ぶのは」

むくりと身体を起こしたサイファは、セルジュを見た。

「お前は、、、、」

「セルジュといいます」

「呼んだのはお前か」

「ええ。夢使いのサイファですね」

(夢使いを求めているのか?捜してここに?
 何故私がここにいると知った。あれからどれくらい)

状況整理をしたいところだが
セルジュはセルジュで先を急ぐ。

「夢使いなら、頼みたいことがあるんです」

「(何にしろ、夢使を求めていることは確か)断る」

サイファは短く切った。明確な意思を持って。

「目的が何であれ、夢使いとしての力を使うつもりはない」

「夢から醒めない人を助けたい。それだけだ」

セルジュも簡単には引き下がらない。

しかし、まだサイファが上をいった。

「物別れだな」

「待ってくれ」

小さな翼を翻し、サイファは飛び立った。

「一言も聞くつもりはいか」

かといって、ようやく会えた夢使いだ。諦めはしない。

「精霊王にご報告だな。夢使い、、、、サイファ」

サイファの姿形を頭に入れて
セルジュは精霊王の宮に向かった。








「そなたの声が聞こえぬと
 この宮も何やらもの寂しいの」

リシュナが眠りについたまま
どれくらい過ぎたのだろう。

静かに音の消えた時間が流れる。

「アズライル様」

風の精霊が呼んだ。

「セルジュ殿がおみえです」

「セルジュ、、、、見つかったのか」

「ご用件までは伺っていませんが」

「すぐに行く。リシュナを頼む」

「はい」

何一つ進展がないなら、ここに来る理由もない。

アズライルは足早に部屋を出た。


客間に入り、先に通されていたセルジュと向き合う。

「待たせたの」

「いえ。前置きも必要ないでしょうから
 結果から申し上げます。
 夢使いと会うこと、叶いました」

「真か」

「はい。ですが、きっぱりと断られました」

浮島で見つけた道。

そこからの一通りを説明した。

「隠された道の奥で眠りについておったか。
 道を護っていた影は、何者だったのかの」

「そこまでは判明しませんでした」

「して、わかっているのは名前だけなのだな」

「はい」

改めて捜すよりも頼み込むほうが早いと思った。

他を捜す手掛かりが出てこないのだ。

「サイファという名の夢使い。
 淡いブロンドに身の丈はそなたの足くらいか。
 わかった。風の精霊に頼むとしよう」

捜索に関して、風の精霊を上回る存在はない。

アズライルは呼び寄せた。

「捜してもらいたい人物がおる。
 サイファという名の夢使いじゃ」

セルジュが見た姿形を伝えると、精霊は一斉に飛び立った。

「水を差すようで申し訳ありませんが、先ほどの様子では
 会えたとしても手を借りることは難しいかもしれません」

「覚悟の上じゃ。我自身と引き換えになろうともな」

「精霊王、、、、」

「所在がわかったら同席を頼みたいのだが
 かまわぬか?」

「はい」

(もしもの時は、最後にもう一度声が聞きたいの、、、
 リシュナ、、、、わろうてくれるか?)

迎える結末はわからない。

けれど、どんな結末であろうとも忘れられぬ面影を
アズライルはその胸に抱いた。







目覚めたサイファは家に戻ってみた。

整理をした後で眠りについたから散らかってはいないが
それなりに時間が過ぎていたことはわかった。

窓を開け風を入れる。

「助けたいだけか。それで終わればいいけどな。
 どこまで本気か見せてもらおう」

やろうと思えば精霊を使って捜せる。

そこまでの想いなら、話を聞いてみてもいいか。

そう思ったサイファの傍らを、静かに風が抜けた。


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