迷子の時計
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アントワネットとルディがそんなやり取りをしているころ 「嘘、、、、何処で」 「姉さん?」 「あ、あの時(どうしよう、、、、あれは)」 あの時計は両親の形見。自分は勿論、凪にとっても大切な物だ。 (どうしよう。拾った中には無かったからてっきり) ソファーに座り込み黙った舞夢の隣に、凪も座った。 「どうしたんだよ。急に深刻な顔して」 「凪、、、、、あの、、、、」 「俺には言えないことか? 「ごめんなさい、凪」 「、、、、、、は?」 話の途中でいきなり謝られ、凪も言葉が続かなかった。 「あの、、、、形見の懐中時計あるじゃない。その事なんだけど」 「姉さんが持ってるだろう」 「、、、、市場で落としたみたいなの。それで」 人にぶつかり、その時に落としたのだろうと話した。 「そういうことか」 「拾った物の中に無かったから、てっきり落とさなかったと思ってたんだけど 「まあ、、、、大切な物に間違いはないけど」 それでも、舞夢が無事なら両親も許してくれるだろう。 「でも、姉さんが事故に逢わなかっただけ良かったよ」 「凪、、、、」 「馬車を追いかけて車道に出てたらと思うとぞっとする。 「ありがとう。明日警備隊の詰所に行ってみるわ。 「少しばかりの幸運のおすそ分けに期待してみるか。 「、、、、ええ」 沈んだ表情がいくらか持ち直し、凪もほっとする。 「好きな相手に告白して、振られたのかと思ったけど」 「や、、、、何言うのよ。そんなこと、、、、、 (何って、、、、まさか図星?) 凪にしてもこの反応は予想外。 「あ、、、まあ、その、、、、よっぽどの変人じゃなきゃ、兄貴になっても大丈夫」 「だから、、、、もういいわ。お休み」 「、、、、お休み」 舞夢は足早に自室に引き上げた。 「好きな相手がいるってことは確かだよな、、、、誰だ」 残った凪は、そんなことを真剣に考え始めた。 |
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翌日。市場に最も近い詰所。 「すみません」 「はい。どうされました」 早めに家を出た舞夢は、店に行く前に詰所に寄った。 「あの、昨日なんですけど近くで懐中時計を落としたみたいなんです。 「昨日ですか。ちょっと待ってください」 奥に入った隊員は、しばらくすると時計を持って戻った。 「こちらですか」 「あ、見せてください」 手に取り確かめる。見える傷もなく無事に戻った。 「どうでしょう」 「これです。人とぶつかってしまって」 「そうでしたか。ではこちらにサインを頂けますか。 「はい」 名前を入れ、今度は落とさないようにと手提げ袋にしまう。 「ありがとうございました」 「いえ」 舞夢は詰所を離れた。その直後 「時間だぞ」 「ん?ああ、そんな時間か」 詰所要員の交代時間となり、舞夢に対応した隊員は引き上げた。 同じ日。 「すみません」 「はい」 アントワネットがやってくる。 「懐中時計の落し物が届いていませんか。昨日落としたみたいで」 「懐中時計、、、、、少し待ってくださいね」 ほどなく時計を持って戻った。 「こちらですか」 「見せてください」 アントワネットは手に取った。 「傷もついてない、、、、よかった」 「大切な物なんですね」 「夫が旅行先で買ってくれたんです」 「ああ、そうでしたか。 「え、、、、」 「と、これは失礼。では受け取り確認のサインをお願いします」 「はい」 人の良さそうな隊員からペンを受け取り、名前を入れた。 「確かに」 「ありがとうございました」 こうしてアントワネットの手元にも時計が戻った。 舞夢とアントワネット、それぞれの手元に時計は来たのだが、、、、、。 |
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「お帰りなさい」 「ただいま」 凪が帰ってきた。 「遅かったのね」 「急ぎの依頼が遅れててさ。俺だけじゃないよ」 「お疲れさま。夕食は?」 「もらうよ。今日は向こうで食べてる時間無かった」 「出すから少し待ってて。あ、時計見つかったわよ」 「え、ほんとか」 舞夢は手を止めて時計を出した。 「無傷で詰所に届いてたわ。あの後、すぐに届けてくれたのね」 「そうか、よかった」 舞夢には見つからなくても、とは言いはしたが 手に取り眺めていた。すると 「ん、、、、、?」 「凪?」 凪の表情が少しだけ険しくなった。 「どうしたの?どこか壊れてた?でも、戻っただけでも」 「そうじゃない。拡大鏡取ってくれ」 「え、ええ、、、、」 言われた通り拡大鏡を探して渡す。凪の表情は、職人としての顔。 凪は拡大鏡で一点を見る。 「、、、、、凪?」 「姉さん、これ違うよ」 「違う?」 舞夢はすぐに理解できない。 「違う懐中時計が、同じ日に詰所に届いてたの?でもこれは、、、、」 だとしても、詰所で受け取るときに見たつもりだ。 なのに、気がつかなかったのだろうか。舞夢も時計を見つめた。 |
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