キューピッド
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「帰っちゃこないよな」 一人酒をあおった。 ようやく見つけたと思った光を握りつぶしたのは自分自身。 誰のせいでもないからこそ苛立ちは己に向く。 「、、、、、」 空になったグラスに映った自分ごと ぶつかる直前に扉が開いた。 「うわ」 「虎丞?!」 とっさに張った結界に弾き返され 駆け寄った絽帆は、虎丞の腕を掴んだ。 「怪我は!」 「当たって無い、、、、離して」 「あ、、、すまない」 絽帆の脇を抜けた虎丞は背中を向けたままだった。 「いくら謝ったって足りるとは思ってない。 「、、、、、」 「もう一度だけ、触れさせてくれないか。 振り向いた虎丞は自分から歩みを寄せた。 そっと背中に腕を回す。 怖くは無い。知った想いが虎丞を支える。 「ありがとう」 これが最後だと思った絽帆もまた、優しく抱きしめた。 「、、、、会ったよ。昼間一緒だった人に」 「何、、、、」 絽帆が腕を解いた。 「聞いた。絽帆が何で僕を避けてたか」 「、、、、、」 「僕も、絽帆を苦しめてたこと」 「言うな」 「絽帆が僕に望んでたこと」 「言わないでくれ!」 離れようとした絽帆だが、今度は虎丞が離さない。 「それがどんなにお前を傷つけるか、わかってる。だから」 「だけど、このままじゃいつまでたっても同じことでしょう」 「どうしろっていうんだ!」 「絽帆ならいい」 「虎丞、、、、、」 「戻る途中、ずっと考えてた。僕はどうしたいのか。 「、、、、、」 「やっぱり、僕は絽帆といたいんだ。 「本気なのか?夢じゃ、、、、ないよな」 「、、、これでも」 ついと背伸びをして唇を重ねる。夢ではない。 絽帆は抱き返した。きつく。 「ん、、、、」 「ありがとう。何があっても、絶対に守るからな」 「うん、、、、それで、あの、、、」 「無理はするなよ。今は、そう思ってくれただけでいいから」 「怖くは無いけど、、、、恥ずかしいのは、、、 うつむいた頬は赤く染まっているのか。 そんないじらしい姿も、全てが愛おしい。 「顔、上げてくれ」 再びの口づけ。 割って入った舌にぴくりと反応しながらも 「ふぁ、、、、っ」 すっと力の抜けた虎丞を、絽帆は抱きあげた。 「愛してる。お前だけを」 「絽帆、、、、」 「、、、、体も俺の物にしていいんだな」 その言葉の意味に、ぽっと体が熱を持つ。 こくり頷き、体を預けた。 届いた想いを胸に2つの影がベットルームに消えた。 |
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肌を重ねた一夜が明けた。先に目が覚めたのは絽帆。
静かな虎丞の寝息が聞こえる。戸惑いをのぞかせつつも応えてくれた虎丞。
髪をすくい口づけてから、そっとベットを抜けた。
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「ほんとに天使だな」 キュリオがいなければ、この想いが届くことはなかったろう。 そして虎丞がキュリオと出会わなければ この手で守りぬくこと。それを改めて誓った。 「絽帆」 部屋の扉が開いた。 「おはよう。体、辛くないか」 「うん」 すとんと隣におさまる。 虎丞はまだ眠たそうに目をこすった。 うつらうつらしている横顔。 絽帆は優しく、ただ見つめる。 「絽帆?」 「お前が隣にいることが、今は嬉しくてさ」 「すごく単純だね」 「そりゃ、お前に関することならいくらでも。 だが何故か、虎丞は沈んだ表情になった。 「どうした?無理させたか」 「僕は妖しで、絽帆は人でしょう。それって、、、、」 「気になることがあるなら言ってくれ。出来ることはする」 「何もなくてこのまま時間がすぎていけば 「虎丞」 「寿命の差は、どうしたって埋められない」 虎丞は、この苦しさを初めて知った。 (大切な人がいるって、こんなふうに苦しいんだ) ならばこそ、傍らにいる今を思いっきり抱きしめたい。 「絽帆は、他の町にも行ったことあるの?」 「ああ」 「じゃあ、連れてってよ。僕も。キエヌにしたって 初めてゆえの純粋な想い。 絽帆は虎丞の手を引いて 「後悔なんかさせるか」 「絽帆」 「お前との時間に命をかけたって惜しくはないよ」 「、、、、うん」 目を閉じた虎丞は心地よいぬくもりに身を委ねた。 いつかはくるそのその日には |
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