旋律の裏側
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その日の夜。 「お疲れ」 「ただいま」 帰宅したアリエルはフィータの姿を捜す。 夕食は終わっている時間だが寝るには早い。 「フィータは部屋か」 「今日はもう寝るって。 「、、、、」 フィータに直接訊く前に コンサートに行ったのならあの曲を聞いているはずだ。 「フィータのことで少しいいか」 「アリエル?ああ、勿論だ」 帰って来ての第一声ともとれる言葉だ。 それなりだろうと、オルガも襟を正す。 「どうした」 「今日のコンサートにも来てるか?」 「2人で行ったよ」 「その時にフィータの様子どうだった。 「変わったこと、、、、」 あるとすれば一曲目の反応だろう。 アリエルが気にする理由はわからないが 「あるっていえばあれかな。一曲目を聞いたとき。 「フィータはその曲を知っていた。そうとれるか?」 「いや、断言はできないと思う。 「あの曲に反応したか」 「アリエル、何があった」 「コンサートの後、アルドさんからこんな話を聞いた」 アリエルはアルドの話をそのまま伝えた。 「ほんとか?それ」 「父が盗作をしたのか、たまたまあの楽譜を手に入れたか。 「記憶の中ね。 「ああ」 「起きてたら話してみるか?」 「そうだな」 あまり時間をかけたくない。 待つアルドは一日千秋の思いだろう。 それに、焦りの気持ちがフィータに向くことは避けたい。 「見てくる。起きてたら訊いてみるよ」 ソファーを立ったアリエルはリビングを出た。 「どこでどう繋がるかわからないもんだな」 もしも本当にアリエルたちの父親が盗作をしたのなら 何かが、アリエルとアルドを引きあわせた。 結末が決まっているのなら ほどなくアリエルが戻った。 「もう寝てた」 「やけに早いな。じゃあ、明日にするか」 「ああ。フィータのこと気をつけてみてやってくれ」 「わかった」 過去で繋がっている一本の糸。 それが少しづつ手繰り寄せられようとしていた。 |
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翌朝、いつも通りの一日が始まる。 「行ってくるよ」 「行ってらっしゃい」 アリエルを見送った後のフィータの日課は草木の水やり。 最近のお気に入りは背の高い観葉植物だ。 外に出してあるプランターを一回りした後 「あれ、、、元気ないな」 元々水は少なくてすむ種類。 さわっても、そんなに乾いてはいない。 「う〜ん、、、、」 「どうした」 下を向き、考え込みながら歩くフィータに 「オルガ、あの子元気がないんだ。 言いながら、鉢をさす。 「乾いてないなら、逆かな」 「でも、お皿にたまった水は捨ててるよ」 「じゃあ、肥料混ぜてみるか。 「そしたら、また元気になる?」 「絶対とは言えないけど、何もしないよりはいいだろう。 「うん、わかった」 昨日のことはもう気にならなくなったのか 「もうちょっと待っててね」 見せたのは、いつものあどけない笑顔だった。 |
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夕方に少しかかるくらいの市場。 いつものことながら多くの人で賑わっている。 2人は先に花屋に向かうことにした。すると 「アルドさんだ」 「え」 「アルドさ〜ん」 「フィータ、ちょっと待て」 もしあの話になっていらぬことを思いだしたら アルドが気づく前に去りたかったが アルドは2人に歩みを寄せる。 「こんにちは、アルドさん」 「こんにちは」 「どうも」 そしてオルガの危惧とおり 「フィータさん、楽譜の話は聞いてもらえましたか」 「楽譜?」 「ちょっと待って下さい。その話はアリエルから改めて」 「詳細は別にして、話がでたのかどうかだけです。 「楽譜って、、、、何の」 「この前のコンサートの一曲目です。 「一曲目、、、、あの曲」 「フィータ今じゃなくていい。後にしろ。 だがその間にも、フィータの中で曲が巡った。 小さく口づさんだその時に蘇った記憶。それは 「あ、、、ご、ごめんなさい」 「フィータ」 「もう、、、言わない。だから。 「フィータ、待て」 人の中に駆けだしそうになるフィータを止める。「どうして、、、怒るの。きれい、、、、ごめんなさい」 「フィータ、大丈夫。誰も怒ってない。怖がらなくていい」 手を添えて近くのベンチに座らせる。 「お騒がせしてすみません。大丈夫です」 視線を向ける人々に一声かけたオルガは 一方のアルドは予想もしない反応に言葉がでない。 「あの、、、すみません。無理をさせるつもりでは」 腕の中、フィータは脅えしがみついていた。 「何かを思い出したんでしょう。 これだけ脅えるほどの記憶を植え付けた曲。 いったい何があったというのだろう。 だが、今のフィータに食い下がる気にはなれなかった。 「わかりました。落ち着いたら驚かせてすまなかったと」 「伝えます」 「先に失礼します」 先に踏み出したアルドの足音がゆっくりと遠ざかって行った。 |
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