旋律の裏側
並行して同時に存在する2つの世界。
一方には背に翼を宿す命が存在し、もう一方には翼を持たぬ命が存在する。
それぞれに息づく地で、日々の営みは続いていた。
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多くの旅人が行き交う町、サルバス。 中央と地方を結ぶ宿場町として この町で宿を営むアリエルは それは、宿屋で開催されている小さなコンサートの企画書。 週一回のペースで、月ごとに内容を変えている。 今回の立案は、バイオリンのソロコンサートだった。 立案した部下の話では 初参加で優勝し、美しい青年ということも手伝って 悪い案ではないし、話題づくりにもなるだろう。 アリエルは決裁印を押した。 |
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その日の夜。 食事を終えたアリエル宅では 「こういう部分はまるっきりだめだ」 プレ板のチラシを見ながらこう言ったのは 横からは、アリエルの弟フィータが覗きこんでいる。 「アリエルは聴いたことあるのか?」 「いや、初めてだ。 「それはまた、、、、世の中には天才っているんだな」 「持って生まれた才能でも磨かなきゃ使えない。 「アリエル、この人と一緒にお仕事するの?」 「そうだよ」 「じゃあ、お星様にお願いしておくね。 「ありがとう」 あどけない笑顔が浮かぶ。 幼子のまま時を止めたフィータは アリエルとオルガにとって、少しだけ寂しさを覚える笑顔。 守るのだと思うと同時に そんな2人の心を知りえないフィータは |
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それから数日後。 オルガとフィータはいつもの買い出しにきていた。 市場には彩りも鮮やかな品物が並ぶ。 「今夜は何食べたい」 「うんと、、、」 食事を含め家事全般はオルガの役目。 フィータ達と暮らし始めてから腕も上がった。 「あ、オルガ、あれ」 「ん?へえ、、、珍しいな」 並んでいたのは、あまり見ることのない貝だった。 港近くの市場にはよくでるが 「あれににするか」 「向こうのは、うわ」 「フィータ?と」 カゴに手を伸ばそうとしたフィータがつまずき 転がる中身を急いで拾う。 すると、もう一人の手が加わった。 「大丈夫ですか」 「ええ。すみません」 店主に詫びをいれてから拾い上げたものを 「ありがとうございます。助かりました」 「ごめんなさい」 「いえ」 先に気が付いたのはフィータだった。 「あれ、、、オルガ、この人」 「フィータ?」 「ほら、アリエルが話してた人」 「アリエル?あ」 「宿の支配人のアリエルさんですか?」 アリエルの名前にオルガも気づき 2人の前にいるのは、バイオリン奏者のアルドだった。 「アリエルと一緒に暮らしてるオルガです。 「こんにちは」 「そうでしたか。初めまして」 フィータの視線が手元に動くが、バイオリンはなかった。 「バイオリン、無いんだ」 「え、ああ、いつも持ち歩いてるわけじゃありませんから」 「どんな音がするの」 「言葉で言うのは難しいけれど、、、、」 「聞いてみたいな」 「フィータ無理を言ったらだめだよ」 「コンサートに来てもらえれば」 「お仕事の時は、行かないって約束なんだ」 (何だろう、、、、何か) どこかかみ合わない違和感を感じるアルド。 だが、初対面の相手とフィータが話せば オルガもそれはわかっているが 「フィータ、コンサート行きたいか」 「うん」 「じゃあ、アリエルと相談してみよう」 「ほんと?アリエル、許してくれるかな」 (弟だよな。普通、名前で呼び捨てにするか? 見た目よりもずっと幼く感じる。 そしてもし、その幼さが実際のものだとしたら。 だとしたら、感じる違和感にも説明がついた。 「フレデリックは?」 「フレデリックは難しいと思うよ。 「うん。わかった」 「行けたら、覗かせてもらいます」 「楽しみにしてるね」 「ええ。お待ちしています。それじゃ」 軽く会釈をして歩き出した。 「抱える事情は、人それぞれか」 日々の様々を纏い人は生きる。 自分もまたその一人であることを思い、市場を後にした。 |
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