Little Prince


並行して同時に存在する2つの世界。

一方には背に翼を宿す命が存在し、もう一方には翼を持たぬ命が存在する。

それぞれに息づく地で、日々の営みは続いていた。


白の統括アウラクアの居城。

直属の部下アウステリアを前に
アウラクアは溜息をついた。

「どうして毎回こうなるのか。
 ここしばらく、ずっとアウステリアだもんね」

「はい」

「相手がアウステリアだからって
 手を抜いてるわけじゃないでしょう?」

「当たった感じでは、皆真剣なのですが」

「アウステリアの実力が、飛びぬけてるってことか」

「至らず申し訳ありません。気合いを入れて鍛え直します」

アウラクアの城では、定期的に御前試合が催されてる。

剣術を含め身体能力の向上が目的なのだが
ここ毎回の優勝は、アウステリアが常だった。

アウステリアを頼もしく思うと共に
他の面々にも奮闘を願うところだ。

「次の優勝もアウステリアだったら
 あたしと一戦願おうかな」

「そのような、アウラクア様となど畏れ多い」

「そう言わないでよ。
 あたしだって、それなりに鍛えてるつもりだし遠慮はしない。
 手加減無しの、真剣勝負を頼みたいんだけど」

普段の鍛錬は専属の指南役がいる。

アウラクアは他が相手でもいいのだが、如何せん白の最高位。

遠慮なしで当たれといっても難しいのはわかるが、正直飽きる。

受けたアウステリアは統括を相手にすることへの遠慮反面
頼むといわれて断るのは失礼とも思う。

少し考え、こう返した。

「わかりました。
 機会が出来ましたらお相手務めさせて頂きます」

「楽しみにしてる。
 それから、優勝の記念品はちょっと待っててね」

「アウラクア様、無ければ無いで
 そのようになさってください。
 そもそも、御前試合は
 鍛錬の成果をご覧いただく場なのですから記念品など」

「いつもの優勝杯とメダルは用意してある。
 だけど、アウステリアが優勝なら別の物を考えてたんだ。
 さすがにここまで続くと、毎回同じはどうかと思ってね」

優勝者に対しては優勝杯と記念のメダルが用意されている。

しかし、アウステリアが優勝ならば
同じものがいくつも手元に残る。

それでは受けるアウステリアも邪魔になるだろうと思い
アウステリアが優勝の時には別の品を考えていた。

今日に間に合わせたかったが、難しかったようだ。

「そこまでお気遣い頂きましたこと、お礼申し上げます」

「そう悪い物じゃないと思うよ」

渡った後のことを想像しているのか
アウラクアはどことなく楽しそうだった。

極端に的外れな品物ではないと思うが
アウラクアは時々人をからかうことがある。

その意味で若干の不安は残った。

「手元にきたら渡すね」

「はい」

短いノックの音がして女官が入った。

「広間の支度が整いました」

「わかった、すぐに行く」

「承知した」

「お願いいたします」

御前試合の後は晩餐会だ。

アウラクアを筆頭に重臣が揃う華やかなものだった。

「行こうか」

「はい」

歩き出したアウラクアにアウステリアも続いた。

 



晩餐会を途中退席し、アウステリアは家路についた。

「ただいま」

「お帰りなさい。お父様」

戻ったアウステリアの姿を見つけ、息子のフラウが駆け寄る。

軽々と抱きあげソファーに戻った。

「お父様、優勝したんでしょう?」

「ああ」

「そうだよね。お父様強いもん」

無邪気な笑顔を浮かべるフラウは
自分のことのように嬉しそうだった。

「ねえ、いつものメダル見せて」

「今回はメダルじゃないんだ」

「そうなの?」

「アウラクア様が特別に用意して下さるそうだよ」

「ほんと?何をくださるんだろう。
 甘いお菓子がいっぱいだったらいいな」

御前試合の優勝記念品にそれは無いと思うが
フラウはすでに確信しているかのように指を折った。

「チョコレートとか、ジャムがたくさんかかったクッキーとか」

「まだ何をいただけるかは、わからないよ。
 でも、頂けることに対して感謝するんだぞ」

「うん」

大好きな父の腕の中、フラウはすっぽりと収まる。

「どうした、フラウ」

「お父様、大好き」

「私もだよ」

愛し子をしっかりと抱きしめ、アウステリアは優しく髪をなでた。


数日後。

「失礼いたします」

アウラクラの呼ばれ部屋に入ると、テーブルに袋があった。

「お待たせ。これ持って帰って」

「頂戴いたします」

持ってみると、大きさの割にはそう重くない。

本当に、フラウが期待していたお菓子だろうか。

アウステリアにしてみれば記念品が目的ではないし
フラウが喜ぶのなら、それはそれで優勝した甲斐もある。

そう思った時、部屋に城務めが入った。

「失礼いたします、アウラクア様。
 黒の統括シェスタ様より使者が参っておりますが」

「シェスタから?シェスタとの予定は特に無いはずだけど。
 わかった。控えの間に通しておいて」

「はい」

務めを帰した後、自然と2人は気を引き締める。

「緊急事態でしょうか」

「本当に深刻なら、使者じゃなくて本人が来るでしょう。
 そこまで差し迫って無いとは思うけどね」

「こちらを置いてから、謁見の間に向かいます」

「じゃあ、後で」

「はい」

アウステリアは部屋を出た。


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