



Night mare
同じ日の夜。
「会えたのか」
「ああ。フィータがずいぶん懐いてたよ」
夕食を終えた後2人になり、アズライルとの話をしていた。
「でも結局わかってるのは名前だけ。
やっぱり金持ちなのかな。のんびりっていうか」
「その分、リシュナさんのほうがしっかりしてそうだな」
そのまま何となくの雑談をしていると、不意に扉が開いた。
「フィータ。どうした」
「オルガ、、、、」
フィータはがしとオルガの腕を掴んだ。そして
「やだよ!置いてかないで」
「何?」
「フィータ、急にどうしたんだ。
オルガがいなくなるなんて言うわけないだろう」
だがアリエルのことなど見えていないかのように
フィータはオルガにすがりつく。
「何でさよならなの?いい子にして、言うこときくから」
「フィータ、落ち着け。さよならなんて言わないよ」
「ほんと?いなくならない?」
「ああ。悪い夢だよ」
「オルガ、、、、」
小さくしゃくりあげるフィータを抱きよせた。
何かに脅えるように、フィータは腕の中で小さくなる。
「大丈夫。怖くない」
「、、、、、」
「俺もアリエルもお前を守りたい。怖くないよ」
まじないのように、何度も何度も繰り返す。
それを受けてようやく落ち着きを見せたフィータに
2人はひとまず胸をなでおろした。
「今日は俺の部屋で寝るか?」
「うん」
「アリエル。先に」
「ああ」
オルガの手をしっかりと掴み、一緒に部屋へと引き上げた。
見送ったアリエルは言いようのない不安を覚えた。
「悪い夢、、、。急にどうしたんだ」
小さな嵐の前触れだった。
「フィータ、、、、、、」
「アリエル、いい」
夢に怯えたあの日以来
フィータはオルガから離れようとしなかった。
あどけない笑顔は影をひそめ、不安そうなそれでいて
必死になっているような顔で、オルガの傍にいる。
「また俺がいなくなる夢でも見たのか」
眠れていないせいもあるのだろう。顔色も悪い。
「オルガのこと、誰かが連れていっちゃうんだ。
知らない人。 オルガは自分のものだって。
オルガを返しってって、そう言ったら、、、、、」
ぎゅっと腕を掴んだ。
「行かないで。いなくならないで、オルガ」
尋常じゃない。それがアリエルの判断だった。
今まで見てきた無垢な幼子とは違う何か。
「フィータ、怒るつもりはない。
だからちゃんと聞いて答えてくれ」
「アリエル?うん」
「アズライルさんたちと会ってから、一人で外に出たか?」
「してない。お買いものもとか、外に出た時はオルガと一緒」
「ああ。それは間違いない」
「じゃあ、アズライルさんたち以外に初めて会った人は?
それか、家に誰か来てフィータだけ会った。そういうことは」
「えっと、、、、」
「アリエル、何のつもりだ」
アリエルは呟いた。
「昔の客。可能性はあるだろう」
「まさか、、、、そんな、ここにまで」
過った可能性のひとつ。だがフィータは首を横に振った。
「そうなると、本当に夢見が悪いだけか」
それにも素直に納得はできないが
他に理由のつけようもない。
「フィータ、病院に行ってみよう」
「どうして?どこも痛くないよ」
「眠れる薬を少しもらってきたほうがいい。
このままじゃ、本当に病気になってしまうよ」
「お薬嫌い」
「嫌いで終わらせていい話じゃない。
気が付いていないだけで、悪い所があるかもしれないだろう」
「でも、、、、、」
「フィータ」
「俺もアリエルもフィータに元気になってほしいだけだ。
どうしても嫌ならあと一日だけ様子を見て
それでも悪い夢が終わらなかったら、病院に行こう」
「、、、、、わかった」
「怖くない。大丈夫」
ゆっくりと何度も繰り返されるオルガの言葉に、フィータは小さく頷くだけだった。