
妙薬
「無事だったのか」
「あなたも。再びお会い出来るとは」
「迦螺霧さん、誰と」
「ああ、昔の知り合いで弥杜という。同じ里で生きていた者だ」
「弥杜です」
「蛍雪です」
「迦螺霧、こちらは」
「、、、、いろいろあってな。そうだ」
迦螺霧は思い出した。弥杜が薬師であることを。
「弥杜、薬師としての知識はまだ健在か?」
「実際にいじることは滅多にありませんが
衰えてはいないつもりですよ」
「少し時間をもらえないか。
お前の知識と腕を借りれば、方法があるかもしれない」
「迦螺霧さん、どういうこと」
「弥杜は薬に詳しいんだ。
もし白竜に上手く作用する薬ができれば」
「、、、、兄さんは楽になれるかもしれない」
「可能性はあるだろう。弥杜、話だけでも聞いてくれないか」
今の時点では、何の事だか話がみえない。
ともあれ、ここで終わる話ではなさそうだ。
「わかりました。家のほうへどうぞ」
「ありがとう。蛍雪、ゆっくりな」
「はい」
(見えていないのか。蛍雪、、、、彼も)
思いもしない再会に考えを巡らせながら、弥杜は2人を連れて家に戻った。
|
「美海、ただいま」 「お帰りなさい。あらお客様なんて珍しい」 奥から出てきた美海は とことこと弥杜の足元まで来てみれば 「急な来訪で申し訳ない。隣は蛍雪」 「初めまして」 「初めまして。美海です」 「私の昔の知り合いです。同じ里にいた迦螺霧」 その言葉の意味はすぐにわかった。 「同じ里で生きた同胞に会うなんて」 小さな瞳が、迦螺霧と蛍雪を見上げる。 「無事な姿を見ることができて嬉しいです。 「美海、どうも懐かしんでばかりはいられないんだ。 「弥杜との話しなら私はいいわよ」 「同胞になら、聞かれて困る話ではない。 弥杜も頷いた。 「じゃあ、そうさせてもらいますね」それぞれ腰を下ろしたところで、迦螺霧は口を開いた。 「弥杜は知っているだろう。私と人里の娘の話は」 「、、、、、ええ、覚えています」 人里の娘を愛した迦螺霧に向いた言葉と視線。 それは今思い返しても、重苦しいものだった。 「蛍雪は私の息子だ」 「あなたが」 「はい」 「このキエヌで出会えた」 己はすでに生きた器を持たない事。 蛍雪と白竜を知り、今は共に暮らしていること。 そして今の白竜の状態を大まかに説明した。 「牙を立てないと生きていけない。けれどそれが苦しいか」 「望まなかったとはいえ、辛い結果になってしまいましたね」 「何をどうしたところで償いきれるものではないが 「それで、私が何かお役に立てますか」 「白竜を少しでも楽に出来る何か。 「そうですね、、、、」 弥杜は里での生活を思い返した。 迦螺霧の求めるような物が里にあっただろうか。 答えは、同じように振り返っていた美海が先だった。 「弥杜、あったじゃない。そのままの物が」 「本当ですか」 「妖しの中で生きていても 「、、、、、ありましたね」 「どうにか手に入らないか。都合は何をしてでもつける」 「僕もできることはします。だから兄さんを助けてください」 「弥杜、作れそうなの?」 手を貸すことはかまわないが、問題は材料だ。 同じものがキエヌで手に入るかどうか。 手に入らなければ、里に足を向けなければならない。 どちらにしても、手に入る保証はないが。 「材料がどこまで揃うかですね。 「ありがとう」 「ありがとうございます」 僅かであっても可能性を見つけたことで 気休めでも、ゼロよりはずっといい。 「何かしらできたら連絡します。住まいは港近くの酒場でしたね」 「ああ」 「よろしくお願いします」 手にした希望を強く胸にいだいた。 |
|
![]() |
|
![]() |
|
2人を送り出し、弥杜は本を開いた。 材料と工程を確認していく。 「キエヌで探すより、初めから里に行った方が早いか」 「今頃、どうなっているのかしらね」 膝の上で、美海が小さく呟いた。 「確かに妖しの里は私たちの故郷。でも、戻れる場所じゃない」 「美海、、、、」 ことりと、美海がもたれた。弥杜は優しく髪をすく。 「どこで生きようと私たち自身は何も変わらない。 「、、、、、うん」 「今いる場所で生きるだけ。これからも美海と一緒に」 「一緒にいてね」 「隣にいます」 小さな身体をそっと包んだ。 |
|