未知との遭遇


2人がやってきたのはキエヌの髪結い。

闇戯は初めてではないようで、店の主とも知った間だった。

「素敵なお連れ様ね」

「初めまして。イーリスです」

「初めまして。どんな髪がお望みかしら」

答えたのは闇戯。

「イーリスには前髪がないほうが似合うと思うんです。色も重たい。
 ですから、上手く横に流して明るい色に染めてもらえませんか。
 けれど幼くはならないように。
 簡単ではないけれど、貴女ならと思って」

「そう、、、だいたいわかったわ」

店の主はイーリスのなりを観察し始めた。

女性といっても通る顔立ちだから
やりようでは幼くみえるというのも納得できる。

逆に言えば腕の見せ所だ。

「やってみるわね」


そして格闘すること数時間。気がつけば半日が過ぎていた。

「ふぅ、、、この色でどう」

「え?」

「、、、、、こうくるとは。でも、似合いますよ」

闇戯のそれはお世辞ではなく感嘆からくるものだった。

鏡に映ったイーリスの髪は鮮やかな青。

けれど派手に浮いてみえることはなく、不思議としっくり馴染んでいる。

「誰にでも合う色じゃないけど、逆に合う人には合うのよ」

「しかし、、、これでは変わりすぎのような気も、、、」

鏡の中にいるのは自分なのに、他人を見ているようだった。

戸惑いは隠せない。何よりも、ルトヴァーユはどう思うだろう。

「どうしても馴染めなかったら、もう一度染め直すわ。
 ただ、2,3日は様子を見てもらいたいの」

「慣れるまで少しかかるかもしれませんね。
 とりあえず、一度戻りましょう。お代はこちらに。またよろしく」

「ええ。またどうぞ」

「お世話になりました」

折り目正しい礼は忘れず、2人は店を後にした。


「時間も時間だから、このまま居に戻ろうかと思います。かまいませんか?」

「ええ、、、」

イーリスは落ち着かない様子で髪をすくっていた。

「大丈夫ですよ。本当に似合っていますから」

「あの、、、本当にこのままでいいと思いますか?髪ではなくて、、、、」

「あなたと統括が、いい形でいられることを願っています」

「、、、、ありがとう」

同じ時代を同じ場所で生きていた過去。共有できる相手故の安心感かもしれない。

そのあたたかい何かを抱いて、それぞれの場所へ帰っていった。


「え、、、あれって」

「イーリス?」

当然、この髪の持ち主に住人たちは目を向けた。

そしてイーリスであることに驚いた。

その視線に臆することなく離れまで戻ったイーリスだったが
いざルトヴァーユに会う事を考えると鼓動が大きくなる。

「大丈夫、、、、大丈夫ですよね」

大きく一つ息をして、中に入った。その直後。

「私に用ですか?」

声は背中からだった。後姿だけではイーリスだと気づくのは無理だろう。

「あの、、、ただいま戻りました」

「、、、、、イーリス?」

「はい」

振り向いたイーリスに
ルトヴァーユはどう反応すればいいのか分からず固まった。

だがそれも一瞬で、まじまじとイーリスを見る。

「随分と、、、、思い切ったことをしましたね」

「おかしい、、、でしょうか。友人の勧めで」

「驚きましたけど」

ルトヴァーユは1房手に取った。浮かんだのは変わらない笑顔。

「でも、綺麗な色ですね。似合いますよ」

「、、、ありがとうございます。
 誰よりもルトヴァーユ様に言っていただけると嬉しいです」

「キエヌの髪結いに行ったんですね。
 お茶でも飲みながら感想を聞かせてください」

「はい」

返事と共に返った微笑みは、以前にもまして穏やかな優しいもの。

無論、イーリスの評判もいい方向に向かったことはいうまでもない。


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