酒場にて


「同じ賑やかでも、キエヌとはまた別ですね」

宿場町サルバス。

並ぶ店の軒下から人々を眺めたキリエは小さく呟いた。

「キエヌは一番大きな町だから人が集まる。区画整理で整えられた町。
 サルバスは宿場町だから人が常に流れる。活気はサルバスが上かな。さて、酒場はと」

キリエは町で一番大きな酒場へ向かった。


店に入り、注文を取りにきた男に札束を出す。

「この金額で買える一番いい酒を。3分の1は酒の肴に回してください」

「あの、、、本当にそれでよろしいので?」

「ええ」

「、、あ、、はい。お待ちください」

その金額にあたふたと戻り、暫くすると別の男が酒を運んできた。

「ありがとうございます。では、こちらを」

運ばれたのはこの店でも5本の指に入る最高級の物だった。

近くの客が遠慮がちに目を向ける。

「どうも。この店のマスターですか?」

「ソプレーゼと申します」

注がれた酒は淡い緑色だった。口に含み少し楽しんでから流す。

「いかがですか」

「甘さが残るけれどしつこくは無い。いいものですね。
 それに、なかなかの賑わいのようで」

「ありがとうございます」

キリエの言葉どおり、店はほぼ満席だった。

と、そこへ入ってきた客が席を探しつつ2人のテーブルに近づいた。

「今日もいい人出だな」

「おかげさまで。暫くだが忙しいのか?」

「俺が忙しいのは喜ぶべきじゃないだろうが、仕事が無いもの困るしな」

相手は町の警備隊を預かるケイオスだった。

ぐるりと店を見渡すが、やはり満席のようだ。

「出直すか。それじゃまた」

「悪いな」

「お一人ですか?」

行きかけたケイオスをキリエが呼び止めた。

「私も一人ですから、相席でよければどうぞ。キリエといいます」

誘いの意味で軽くグラスを上げる。

酒場では珍しくないし、ケイオスも初めてではないから受けることにした。

「それじゃ、乗らせてもらいます。私はケイオス。ソプレーゼ、いつもの」

「了解。失礼します」

ソプレーゼはテーブルを離れた。

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