


黒水晶 〜 オニキス 〜 の姫君
アウラクラ来訪の次の日。
「シャルミラ、買い物行ってくるね」
「いってらっしゃい。気をつけて」
キュリオは市場へ買い物にでた。
「お茶の葉と、、、、蝋燭も少し」
必要な物を考えながら通りを歩く。その途中で、ふとこんなことが浮かんだ。
「、、、キエヌで使うお金って、どうしてるんだろう」
キエヌで生きる為には、キエヌで使えるお金が必要。
今手にしているお金をシャルミラは何処で手に入れているのか。
それを疑問に思うことも、キュリオはなかったのだ。
「何も知らないで、シャルミラに守られてるだけだったんだ、僕」
純白の翼に守られるだけの雛鳥。
勿論、シャルミラとこのまま一緒にいたい。
だが守られるだけではなく、自分も何かをしたいと思った。
「そうだよね。雛鳥だって成長して自分の翼で飛ぶんだもの。
僕は、、、、飛べないけど、僕にだって出来ることはきっとある」
「何してるんだい。こんな道の真ん中で」
「え?」
背中からの声に振り向けば、いたのはアウラクア。
キュリオは道の真ん中で足を止めていたのだが
言われるまで気がつかなかった。
「歩道にいたからいいけど、この通りは賑やかで馬車も多い。
ぼ〜っと歩いてると、怪我するよ」
「あ、ごめんなさい」
「あたしに謝られても困るけどね」
くすりと、アウラクアは笑う。
「どうしたの。深刻な悩み事?」
「え、、と、、、」
「否定はしないんだね。邪魔になるから、とりあえず座ろうか」
2人はベンチに移った。
「それで、どうしたの」
「(アクアさんは、僕と会う前のシャルミラを知ってるんだよね)」
シャルミラの為に何が出来るのか、そのヒントをもらえるかもしれない。
キュリオはそう考えた。
「向こう側でシャルミラに助けられて、ずっと庇ってもらった。
こっちに来てからも、何も知らないで守られてたんだなって、今更だけど気がついたんです。
それで、シャルミラに何かできないかなって思って。
昔のシャルミラって、どんな感じだったんですか?喜ぶことって何だろう」
「そんなに変わってないと思うよ。
これといって執着している物もないし、不満とか何が欲しいとか、あまり聞かないけど」
「何かないかな。
守られるだけの雛鳥じゃなくて、一緒に暮らす同じ存在になりたい」
キュリオを手元においたばかりの頃
シャルミラからは、キュリオは脅えてばかりだと聞いていた。
だが、その雛鳥も親を助けたいと思うまでに成長したようだ。
そんなことを思い出しながら、アウラクアはキュリオの横顔を見ていた。
そこに
「綺麗なお姉さんと可愛らしいお嬢さん。ちょっと」
こんな声がした。
誰のことかと見渡すキュリオの傍で更に続く。
「あなたたちですよ。ベンチのお2人」
「え、、、(それって、つまり)」
返事のできないキュリオの横で
アウラクアはこれでもかとばかり、そうとは分からない作り笑いを返す。
「綺麗なお兄さんと可愛い弟なら、ここにいるけれど」
「は、、、?」
今度は男が固まった。そしてまじまじと見つめる。
「いや、、、その、失礼」
そして何故か嬉しそうな顔になった。
「ぴったりだ。よかったらこれに出てくれませんか」
男は一枚の紙を差し出した。
「何ですか」
受け取ったキュリオは文面を追う。
「美人コンテスト?」
「今度の祭りのメインイベントなんですが、思うように集まらなくて困っていたんです。
考えてみてください。あ、そこの人、待って〜」
「あ、あの」
キュリオが顔を上げたときには、すでに別の誰かを口説いていた。
「ふうん、、、、そうだ、これに出てみたら?」
「僕が?」
驚いて見返すキュリオに、アウラクアは美しく微笑んだ。
「ほら、上位入賞者には賞金ありって書いてある。
シャルミラのために何かをするのはいいとして、元手がいるだろう?
どう使うかは後回しにしてさ」
「それは、、、」
確かにお金はあったほうがいい。
だが自分よりはアウラクアのほうがよっぽど適任に思える。
「アクアさんのほうが、ずっと綺麗だと思うけど」
「おや。ありがとう。でもキュリオが何かをしたいんだから
あたしじゃない。大丈夫、任せといて。美人にしてあげるから」
「、、、、、」
不安はあるが、他に当ても無い。
「わかりました」
「そしたら、シャルミラには知られないように話せる場所がほしいね」
「、、、、ランスのお店、借りられるかな」
「ランスって、、、まさか、あの?」
「キエヌで写真屋をやってるランスだけど、知ってるんですか?」
「白銀を目覚めさせた宝刀の使い手だろう?知ってるよ。
百年以上眠っていた白銀が目覚め、何の応答もなかった宝刀が
一時とはいえ有翼側に戻ったんだもの。
まして、その使い手がキエヌで生まれキエヌに生きる人だった。
いくら過去に流れを汲むっていったって、それこそ気の遠くなるような昔の話なのに」
「ランスなら僕たちの事情も知ってるから、話もしやすいと思います」
「そう。ならちょうどいい。会ってみたかったんだ。何処にあるんだい」
「こっち」
2人はランスの店へと足を向けた。