

黒水晶 〜 オニキス 〜 の姫君
「どうしたのだろう。こんな時間まで戻らないなんて」
外はすでに夜。昼ごろに出かけたキュリオがまだ帰ってこない。
探そうと思えば風の精霊に頼めるが、監視に近いことはやりたくなかった。
「、、、あと15分待ってみるか」
時計を見てあと15分を限度と決めた時、廊下を駆ける足音がした。
近くなった足音が遠くなっていく。
部屋の前を過ぎたのだろうとドアを開け
離れていく後姿を呼び止めた。
「キュリオ」
その声にキュリオは足を止めると、シャルミラのほうへ引き返す。
「あの、ごめんね。心配させて。
ランスのところで話し込んじゃって」
顔を上げられないキュリオの頭上で、小さなため息が落ちた。
気がついたキュリオは更に小さくなってしまう。
「、、、ごめん、、、」
「怒っているのではありませんよ。
一から十まで全て詮索するつもりもありません。
でも、夜になるのなら一度連絡をください。
言霊は飛ばせるでしょう?」
「、、、、、、」
「話していたことを知らせなさいということではない。
遅くなると、それだけを伝えてくれればいいんです」
「うん、、、、ごめんなさい」
「いいですよ、わかってくれれば。、、、、、顔を上げて」
そ〜っと顔を上げたキュリオに、変わらない穏やかな笑みが向けられる。
「どうしても親代わりになってしまうけれど、改める頃なのかな」
「シャルミラ?」
「このキエヌに移って、それなりに時間も過ぎた。キュリオも強くなりましたね」
「、、、、どうしたの、急に」
やはり怒らせてしまったのだろうか。
それとも、シャルミラにとって一緒にいるのは役目だからか。
「ごめんなさい。言うこときくから、置いていかないで」
「キュリオ、、、、」
「僕はシャルミラと一緒にいたい。それだけなんだ」
胸に顔をうずめるキュリオを抱きとめ、シャルミラは純白の翼を翻した。
キュリオは思う。そう、いつでもこの翼に守られていたのだ。
「言葉が足りませんでしたね。すみません。
私は嬉しく思います。脅えてばかりだったあなたが、強く明るくなったことを。
だから守るだけではなく、家族という言葉が合うかわかりませんが」
シャルミラは言葉を探しているようだった。キュリオはシャルミラを見る。
「、、、、これからも一緒にいてくれる」
「ええ。このキエヌで共に暮らす相手として、これからもよろしく」
「うん」
明るい返事が返った。と同時に、ぐ〜とお腹が鳴った。
「あ、、何も食べてないんだ」
「、、、、出かけたのはお昼頃ですよね。この時間まで何も?」
「お茶はもらってたんだけど」
さすがにこれには小さく笑う。
「何か作りましょうか」
「シャルミラが?」
「簡単なものですよ。お茶のほう、お願いします」
「シャルミラの手料理か。すごく楽しみ」
「(パンに挟むだけなのですが、、、、、)」
大きな期待に胸を膨らませるキュリオに対し、口に出すことは出来なかった。