黒水晶 〜 オニキス 〜 の姫君


ランスとアージュは奥から出た。

見たことの無い相手を連れているキュリオに少し間があくも、礼儀正しく出迎える。

「いらっしゃいませ。お久しぶりです」

「こんにちは」

「こんにちは。えっと、あ、彼はアウラクアさん。
 それから、この店の主で僕たちも助けてもらってるランスと
 一緒に住んでるアージュ」

「初めまして。アクアでいいよ。、、、お前さんが宝刀の使い手か」

アウラクアの言葉に、ランスとアージュは顔を見合わせた。

「キエヌで生まれキエヌに生きる人でありながら
 白銀を目覚めさせた。それに、一緒にいるのは湖の精霊だろう」

ランスはアージュを自分の後ろに入れた。

「向こう側の方ですか。僕たちに何か?」

「そうじゃないんだ。あの」

「別に2人をどうこうじゃないよ。
 少し場所を借りたくてね」

「シャルミラには、あまり聞かれたくない話なんだ。
 それで、僕たちのことわかってるランスのお店
 使わせてもらえないかなって」

聞いたアージュがキュリオに駆け寄った。

「駄目です。シャルミラ様に隠れてなんて。
 喧嘩したままなんて、よくありません」

「あ、、、アージュ、喧嘩とかじゃなくて」

「まあまあ、落ち着いて。説明するから」

「、、、、喧嘩じゃないんですか?」

やれやれと、ランスは一つ息をつく。

場所を貸すだけで絶対に手は出すまいと、心に決めた。

「とにかく、一度座ってください。
 ここを使うつもりなら、話は聞かせてもらいますよ」

「勿論、かまわないよ」

一同テーブルにつくと、アウラクアは先ほどの広告を出した。

「これなんだけどね」

「、、、、今年は恋物語の再現じゃなくてこれなのか」

「女神と青年のお話、やらないんですか」

「みたいだね」

「これにキュリオを参加させようと思って」

「、、、、、は?」

「キュリオ様?」

2人の何とも形容しがたい視線がキュリオに向く。

「その、、、、最初から話すと」

押されながら、キュリオは事の経緯を説明した。

アウラクアはシャルミラの友人。

シャルミラのために何かをしたいと思い
買い物に行く途中でばったり会ったアウラクアに相談。

そこへこの広告を持った男が現れ、半ば押し付けられた。

そして何をするにも資金は必要ということになり
このコンテストに参加をすることにした、と。 

「シャルミラ様に聞かれたくない話というのはわかりました」

「そういうことだから、終わるまでここ使わせてもらえるかい?」

「かまいませんよ」

「ごめんね。邪魔にならないよう気をつけるから」

「たいして客も入りませんから、気にしないで下さい」

のんびりしたものだと、アウラクアは店を見渡した。

が、店の主が気にしていないなら、それでいいのだろう。

「そしたら、後は衣装か。
 3日後にここでいいかな。それまでに探しておくよ」

一体、何が来るのか。

アウラクアを見るキュリオは、不安そのものだった。

「そんなに心配しなくても、ちゃんと似合うの見つけてくるから」

「、、、、、はい」

時を告げる鐘が鳴った。

「あ、もうこんな時間なんだ。買い物して帰らなきゃ」

「それじゃ、また3日後にね。暫く世話になるけど、よろしく」

「場所だけならいつでもどうぞ」

「キュリオ様のお気持ち、上手く伝わるよう願ってます」

「ありがとう」

不安と同時に、何かが出来るという嬉しさもあるのだろう。

キュリオは少し笑顔になった。

その隣では、アウラクアがすでに衣装をあれこれと考えていた。


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