

町の中心にたつ市場。晴れた休日ともなれば大勢の人で賑わう。
露店の店先を眺めながらサリュはのんびりと歩いていた。
「サリュ、持ってけ」
知った相手が並んだリンゴを投げる。
「ありがと」
器用に受け取り服で一拭きすると、そのままほおばる。
シャリシャリと歯切れのいい音がした。
暫く歩いて大通りを抜けようとしたときだった。
− 危ない 止まって −
「え?」
声がした。
足を止めた次の瞬間、脇道から飛び出した子供が目の前を駆け抜ける。
「、、、、、」
今の声がなかたっら、そのままぶつかっていたかもしれない。
後ろを振り向いてみたが知った人の姿はなかった。
「気のせい、、、だったのかな」
買い物を終えて家に戻ったサリュだったが、さっきの声がどうしても離れなかった。
「お帰り。、、どうかしたの」
荷物も置かずに考え込んでしまっているサリュに妹のシアが声をかける。
「え、、あ、何でもない。母さんは」
「熱は下がったから落ち着くと思うわ。
、、、ねえ、何買ってきたの?これじゃ食事にならないじゃない」
「何って、食べられるだろう」
「そうじゃなくて、どっちかっていうとお酒のおつまみだと思うんだけど」
鞄を受け取り中を覗き込んでいたシアが呆れながら言う。
あまり考えないで買った結果だった。
言われたサリュも改めて見てみれば、、、そうかもしれない。
「食べられなくはないけど、これだけっていうのもね。いいわ、少し買い足してくる」
「シア」
「なに?」
「まさかとは思うけど、俺が出てる間家にいたよな」
「当たり前でしょう。本気でそう思ってるなら兄さんでもひどいわよ」
「待った。悪かった、落ち着け」
滅多にない迫力で詰め寄るシアをどうにかなだめる。
一瞬シアがあの場所にいたのかと思ったが、思い返せば知らない声だ。
「まったく。行ってくるからね」
「暗くならないうちに戻れよ」
「わかってる」
言いながら出て行くシアを見送る。
空耳ではない。たまたま通りかかった誰かがなのだろうか。
「ま、いっか」
もうわからないだろうと、考えるのをやめた。だが、思わぬ来訪者がやってくるのは、この夜のことだった。