



賢者の贈り物(V)
カラカラと馬車の音が届いた。
「帰ったか」
レイスは玄関へと向かう。
「忘れ物のないようにね」
「はい」
開いた扉に先に気づいたルディがガレリアを促した。
「行ってらっしゃい」
「レイス、、、」
駆け出し、そのまま腕の中に飛び込む。
「ただいま」
「お帰り」
遅れてルディが屋敷へと入った。
「ガレリア、馬車を戻しますから荷物をいいですか」
「あ、ごめんなさい」
出て行った時の倍になっている荷物を、レイスは不思議そうに眺める。
「何をしてきたんだ?」
「あけるまで内緒。行こう」
ガレリアの入れたお茶でテーブルを囲む。そして、丁寧に包まれたそれをガレリアは置いた。
「遅くなったけど、誕生日おめでとうレイス」
「誕生日、、、」
「やっぱり忘れてましたか」
「僕とアントワネットさんからね」
「ガレリアが自分で働いたお金で仕立てたものですよ。
わかっていると思いますけど、私は入っていませんから」
「わかっている」
「開けてみてよ」
目を輝かせながら包みとレイスを見比べる。
がさがさと包みをあけ、でてきたのは蒼で仕立てられたドレススーツ。
「ルディのところの手伝いで足りたか?」
「余計なこと考えないで受け取ったらどうです。言うこともあるでしょう」
呼び鈴が鳴った。
「出ますよ」
ルディが部屋を出て行く。
「大切にするよ。ありがとう」
「よかった」
にこにこと満面の笑みを浮かべるガレリアにつられて、レイスも知らずに微笑んでいた。
そこに小さな包みを持ったルディが戻る。
「届きましたよ。同じ日になるとは思いませんでしたけど」
「そうだな」
それはレイスの手に渡った。
「何?それ」
「私からお前にだ」
そしてガレリアの手に渡る。
「僕、、、?」
「ああ、誕生日おめでとう」
「え、、覚えててくれたの」
「お前が生まれた日、お前の存在に感謝する日だ。忘れないよ」
「レイス、、、ルディさんもこのこと知ってて」
「ええ、あけてみてください」
でてきたのは薔薇のモチーフのネックレス。石はガレリアの瞳と同じ色だった。
「綺麗、、」
「あなたの瞳と同じ色がいいときかないので、探し回ったんですよ。
原石を持ち込んで加工して。喜んでもらえるなら、その甲斐もありましたかね」
「ありがとう、、」
「同じ日に渡せるとはね。どうせなら記念写真でも撮りますか?」
レイスの「そこまでは」と、ガレリアの「撮りたい」は同時だった。
「では、声の大きかったガレリアの希望を取りましょう。準備しておいてください」
くすくすと笑いながら部屋をでる。
「貸してみろ」
シャツのボタンを外し、胸を肌蹴させると首にかける。
白い肌の上で、淡い水色の光が揺れた。
そっと触れると、ガレリアは腕を伸ばした。
それが合図のようにレイスはガレリアを包む。
「大好きだよ。このまま死んでもいいや」
「死なれたら困る」
「それくらい幸せだってこと」
「幸せか、、、」
「レイスは違うの?」
何を幸せというのかレイスにはわからない。だが今を変えたくないと思う。
望む相手が傍にいる現実。
「今を変えたくないと思う。幸せなのかな」
「僕も今を変えたくない。
同じ事を考えている僕が幸せだと思うんだから、幸せなんだよきっと」
「そうか、、何よりもいい贈り物だ」
「レイスも着てみて。ルディさん戻ってくるよ」
そしてルディが戻ったと同時に、レイスのほうも終わった。
「ガレリアの瞳とネックレスとレイスの服、綺麗に揃ってますよ。
こんな時くらいは笑ってくださいね、レイス」
賢者の贈り物。それは、相手のために出来ることを、精一杯やり遂げようとする心だと。
遠い記憶の彼方に残る誰かが残した言葉を、レイスは思い出していた。