案内されるまま宮の一室に着いた。ひとまずはミゲルを下ろし、改めてセラフィスと向き合う。

そこにリリスが入ってきた。まだ幼さが残る少女。持ってきたカップを置くとセラフィスの隣に立つ。

「それで何があったんですか」

「評議会が統治者を廃そうとしたんです」

ヴァリティーエは天界でのことを大まかに話した。それを聞いたセラフィスからは大きなため息がもれる。

「まったく、、そこまで無茶をするとは、、」

「これからのことを考えるのに、少し時間が欲しいんです。冥府での逗留をお許しいただけますか」

「わかりました。構いませんよ」

「ありがとうございます」

ヴァリティーエはほっと胸をなでおろす。

「リリス、部屋のほうは」

「ええ、大丈夫」

「あの、こちらは」

「ああ、遅れましたね。私の花嫁で冥府の女主人リリスです」

「初めまして」

「冥府の花嫁、、、」

「あの、、?」

反すうするヴァリティーエにリリスはこくりと首をかしげた。

ヴァリティーエに優しい笑みが浮かぶ。

「いえ、花嫁というには可愛らしい方だと」

言った後に、しまったと表情を止め

「ヴァリティーエ!」

ミゲルが叫び

「ずいぶん、、、はっきりと」

低い声でセラフィスが呟き

「セラフィス」

やんわりとリリスが止めた。

「申し訳ありません。失礼いたしました」

「気になさらないでください。どうぞご案内します」

にこりと笑い、ついてくるように促す。後について席をたったヴァリティーエをセラフィスが呼び止めた。

「リリスのことに関して何かあれば容赦はしませんから、そのつもりでいてください」

優しげな印象には似つかわしくない冷徹な声が飛ぶ。それは、本気だと思わせるのには十分だった。

「セラフィスいいわよ」

それでも表情を崩さないセラフィスを見て、リリスはセラフィスの前に回る。

「ほら、そんな怖い顔しないで。ね」

「誰が何を言ってこようと、傍に居て欲しいのはあなただけ。それだけは忘れないでくださいね」

「ありがとう」

今度こそヴァリティーエを連れて部屋を後にする。ようやくセラフィスの表情から厳しさが抜けた。

「あのお方がそうですか」

リリスの後姿にミゲルが呟いた。

リリスは本来なら天界へと出立するはずだった。

だがリリスはそれを拒み、セラフィスも消えない傷と痛みを背負う覚悟でそれを受け入れた。

2人とも懸命に冥府のために力を尽くした。

けれどごく一部には、まだ認めない者もいる。

リリスのことに関しては
守ろうとするあまりどうしても対応がきつくなってしまうのだ。

「ええ。風当たりも強いでしょうけれど、耐えてくれています。
 彼は私の一件を知らないんですか?」

このことでは冥府だけでなく天界も動いた。

知らない相手がいるほうが不思議に思う。

「ヴァリティーエはついこの間まで囚人の塔に幽閉されていたんです。
 天命を覆した罪で」

「、、、、、、」

「先代カルラ様が統治者に就かれる前の話ですから、知らないでしょう」

「それでよく、、、」

天命を覆したとなれば、翼をもがれ更に責め苦を与えられも仕方の無い行為。

翼を保ち、元の役目に戻るなど考えられないことだった。

「反発は相当なものだったと聞いています。それを跳ね除けるためにも
 必死ですよ。あなたがたと同じように」

「そうでしたか、、、」

「すみませんが、気をつけてあげてください」

「わかりました。注意しておきましょう」

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