
同時に存在する見えない世界。そんな中の一つに命の理を司る場所がある。
地上での一生を終え、再び命を得ることができるか審判を受ける地「冥府」。
来世への出立を許された魂がその時を待つ「天界」。
その天界を統べる白き翼の持ち主カルラの元に、一つの知らせが届いた。
「天界を捨てる、か、、、」
それは、訳あって天界を離れている白き翼の持ち主が
その翼を捨て天界を捨てるというもの。
いずれは呼び戻すつもりでいたが、こうなってはそれも叶わない。
カルラは天界の外れに聳え立つ塔の中にいる親友を思った。
己がこの地位につくずっと昔。
命の理を司る者にとっての禁忌を犯した罪で幽閉の身となっている。
外部との接触を一切絶たれ、今どうなっているのかそれを知ることはできない。
許される時は、その当時の統治者が掛けた封印が解かれる時。
だが、すでに掛けた当人が翼ある者としての生を終えている今
いつになると知る者もいないのだ。
席を立ち、新しいボトルに手を伸ばす。ふいに、その手を掴まれた。
いつの間に来ていたのか、次期統治者候補と噂のたかい、若い白き翼の持ち主がいた。
「それくらいになさってください。最近過ぎます」
「、、、酔いたくても酔えるわけじゃない。大丈夫だよ」
「今回の一件、ご心痛はお察しいたします。ですが、これで気が晴れるわけではありますまい。
出すぎた真似と承知はしておりますが、、、閣下が心配なだけです」
澄んだ瞳で覗き込まれ、カルラは手を離した。
そしてテーブルの上にあるロザリオに目を向けると、そのまま視線を動かさずに問いかける。
「自分の全てと引き換えてまで、守りたい相手がいるかい?」
「私、、ですか、、」
唐突な問いかけにしばし考えを巡らすが、これといった特定の相手は浮かばなかった。
「いえ、、まだそのような相手とはめぐり合えてはいないようです」
「私の知る限り、今回で2人目だ」
「2人、、?このようなことが、前にもあったと?」
「ああ。もう遠い昔の話だがな、、、」
目を閉じれば、いつでも鮮やかに蘇る光景。カルラは静かに語り始めた。