

「来たか」
淡い紫のドレスをまとったイリーナ、そして水色のドレスをまとったジルファールだった。
会場からもれるのは感嘆にも似た溜息。なまじ様になるものだから尚更である。
ただし、それを口にだすものは冥府にはいない。唯一それをしてきたのがカルラだった。
「毎回のことだが、様になるな」
「、、、眠りにつく前に殺されたいか」
「お前もいいかげん割り切ったらどうなんだ?
楽しんでしまったほうが得だろうに」
「他人事だと思って簡単にほざくな!」
ジルファールはカルラを睨みつける。
大抵の者なら身をすくませるその視線を、カルラは簡単に受け流した。
「あ、、あの」
「何だ!」
声を掛けた主に気づかずそのまま返す。リリスがびくりとすくんだ。
「リリスか」
相手がわかり、いくぶん抑える。
「ごめんなさい。でも、ジルファール様、綺麗です」
「なに、、、」
しんと、その場が静まり返る。
あまりにもストレートな物言いに緊張がはしった。
「くっ、、ふ、、ははは」
その空気を破ったのは他ならぬジルファールの笑い声だった。
「まったく、、その言葉が私をからかってのものなら、即刻消し去るところだがな」
飾らない本心をそのまま伝えてくるリリスを、ジルファールは優しくみていた。
その眼差しに先ほどの勢いはない。パチンとジルファールは指を鳴らした。
どこからともなく音楽が流れる。
「楽しめと言ったその言葉、責任はとるんだろうな」
「もちろん。では、一曲お相手を」
差し出された手をとり、2人は場の中心にでるとふわりと踊りだした。ジルファールのそれは女方ではあるが。
集まった者たちから更に大きな声があがった。そして、思いがけない光景をそれぞれの思いで見ている3人。
「あまり驚かさないでください。どうなるかと思いましたよ」
「ジルファールにあんな顔をさせるなんてたいしたものだわ。
あれが上辺だけのお世辞だったら
あなたでも容赦はしないでしょうけどね」
「でも、、どうしてドレスなんですか」
リリスからしごく当然の問いがでる。
「理由はわからないの。
もうずっと昔から続いている宴で、先代もその前もドレスだったそうよ。
ジルファールは最初のうちは着なかったけど、冥府中の住人に頭を
下げられるものだからとうとう折れたというわけ」
イリアーナはその光景を思い出していた。
ずらりと居並んだ全員が一斉に頼むのだ。
『ドレスで出席してください』と。
思い出し笑いがもれる。
宴はまだまだ続くのだった。