

その日、ジルファールとイリアーナの様子は明らかに正反対だった。
イリアーナは楽しくて仕方がないといった様子。
一方のジルファールは不機嫌極まりない。
怒らせたらどうなるか。
冥府の住人なら誰でもわかることであり、自然とジルファールを避けている。
そんな中、リリスだけがその理由がわからずにいた。
もちろん直に尋ねはしないが、どうにも気になりイリアーナの元を訪れた。
「イリアーナ様、何かあるんですか」
「今日は舞踏会なの」
そういわれてイリアーナが楽しそうなのは納得できた。
だがジルファールが不機嫌なのは何故なのだろう。
「それなら、ジルファール様の機嫌が悪いのはどうしてなんでしょう」
「そうね、リリスは初めてだったわね。ふふ、、楽しみにしていてね」
理由はいわずににそれだけを告げると、そのまま行ってしまった。
「??」
リリスの頭には疑問符だけが残った。
そして宴が始まる。
着飾った住人たちが集っている中で、イリアーナとジルファールは今だ姿を見せずにいた。
「遅いわね、お2人とも」
「準備に時間がかかりますからね。とくにジルファール様は」
そう答えるセラフィスも楽しみに待っているようだった。
ふいに一角がざわめき、この場にいる全員が一礼する。
姿をみせたのは天界の統治者カルラ。
必然的にセラフィスが出迎えることになる。
「ようこそ、おいでくださいました」
「あれから傷のほうはどうだ」
「おかげさまで、すいぶん楽になりました。ありがとうございます」
「そうか、よかった」
そう言って微笑むカルラがいくぶん細く見えた。
その理由にセラフィスは思い当たる。
「カルラ様、まさか」
「おそらく、今回が最後だろうな」
「そう、、でしたか」
終焉を迎えつつある状態で生命力を分け与えることは、カルラにとって負担になっていたことは間違いない。
しかし今更どうこう言うことを望んではいないだろう。後は残された時間をゆっくりと過ごすだけなのだから。
「楽しまれてください。何かあったら声を掛けてくださいね」
「そうさせてもらうよ」
その時、先ほどよりも大きなどよめきが起こる。
「うそ、、、」
リリスの小さな声が聴こえた。