

扉が閉まるのを確かめると、セラフィスは膝をついた。
「一度お許しを頂きながらまた裏切ってしまったこと、申し訳ありません。、、、覚悟はできております」
「翼は受け取っている」
「評議会の方々は、私が戻らないと納得しないでしょう。私も一時は籍を置いていた場所ですから、、わかります」
「あの魂を残すことになってもか?」
「今まで共に過ごした時間が私の命の糧です。何があっても後悔はしません。
私は永遠に消えない光を手にいれました。それがある今なら−」
背中の傷が痛む。それはあの時の痛みのようだった。
カルラはセラフィスの前に膝をついた。それを慌てて止めようとする。
「そんなことなさらないでください!私はもう−くっ、、」
言葉が続かなかった。息があがり、肩が大きく揺れる。
カルラはセラフィスをそっと抱きとめた。
「やつれたな、、こうなることはわかっていただろうに」
「、、お願いです、、もう、終わらせて、、ください、、」
「(そのほうが楽だろうな、、だがそれだけは許されん)少し耐えろよ」
「!!」
一瞬だった。激痛が襲い、ゆっくりと和らいでいく。
カルラはセラフィスを抱き上げた。
セラフィスにしてみればそれこそとんでもないことだが、今はこの腕の中が心地よい。そのまま身体を預ける。
その軽さに、カルラは驚かされていた。
ソファに座らせ胸元を緩める。フッと呼吸が楽になるのがわかった。
「申し訳ありません。落ち着いたらすぐに」
「お前も意外と疑り深いな。様子を見にきただけだと言ったろう」
「しかし、本当に納得しているんですか?」
評議会がどれほど規律にうるさいかは知っている。
だからこそ、いつか天界に戻り囚人となることは覚悟していた。
カルラが抑えているとしても、反発が強まることは必至でそれは望むものではない。
「納得はしていない。だが、それを押し切ったのはジルファールだ」
「閣下が?ご自分から天界へ?」
「ああ、この知らせを自分で持ってきた。
即刻引き渡せといってきかなかった評議会を振り切って、お前を冥府に置くと断言したよ。
翼を返せというのもお前には酷だと思ったが、天界で囚人になるくらいなら
このほうがよかったと思っている。評議会はまだ渋い顔をしてるがな」
「、、大勢の方に迷惑をかけてしまったんですね」
「いつもジルファールの仕事を肩代わりしてるんだろう。
これくらいのことはしてもらえ」
「ふふ、、そうします」
セラフィスの顔に赤みが戻るのを見ると、カルラは指輪を取り出した。
「これを渡しておこうと思ってな」
「これは?!」
金の台座にエメラルドがはめ込まれた指輪。
その石は統治者だけに許されたものであり、次の統治者に渡されるべき物だった。
「ばかなこと仰らないでください!私が受け取れると、本気でお考えなんですか」
「本物じゃない。レプリカだ」
そういわれて、改めて指輪を見つめた。
だが、そう教えられても違いがわからないほど作りこまれている。
「私は今でもお前がふさわしいと思っている。だからこれを渡しておきたい」
言葉にならなかった。どう返答したらいいのか、その言葉がみつからない。
謝るべきなのか。礼をいうべきなのか。黙ったまま指輪を見つめるセラフィスだったが、それでもカルラはその心に察しがついた。
「さて、そろそろ戻るよ」
「カルラ様」
くるりと向きをかえ歩き出したカルラを、セラフィスは呼び止めた。
振り向くと、セラフィスはソファからおりて跪いた。胸に手をあて深く頭を下げる姿勢は最敬礼を意味する。
「あなた様にお仕えできたこと、心より誇りに思います」
「私もお前と会えたこと嬉しく思う。あまり無理はするな」