

突然の来訪者に冥府はざわめきたった。やって来たのは天界を統べる白い翼の持ち主で、その名をカルラという。
ジルファールと同じ頃に天界の統治者となり、戦友とも悪友ともいえる相手だった。
「どうだ、セラフィスのほうは」
「仕方ないとはいえ、辛そうだな」
「そうか、、」
「あの決定を、お前が望んだとは思ってないさ」
天界での重要事項の決定は、カルラを中心とした10名ほどの代表からなる
評議会で決まる。
そしてそのメンバーは、ジルファールに言わせると頭の固い者ばかりだった。
だが規律は規律。
それを遂行したうえで、カルラは個人的に様子を見にただけであり
それがわからないジルファールでもない。
「あの時、器を与えることができていたらな」
無理なことだとわかってはいる。
それでも、あの少女の魂を無に還した時のセラフィスを忘れられなかった。
カルラにとってもセラフィスにとっても過去にはなっていない。それは2人を見てきたジルファールにもわかる。
「もう終わりにしろ」
「ジルファール、、」
「過ぎたことだ」
「そう、、だな」
「会っていくんだろう。こっちだ」
先にたったジルファールが足早に進む。その後を、ゆっくりとカルラが続いた。
「痛っ、、」
大きく息を吐き出し、痛みが引くのを待った。そして、そんなセラフィスを見るたびにリリスはいたたまれなくなる。
「ごめんなさい、、」
決まって謝るリリスの髪を、セラフィスは優しく撫でた。
「約束したでしょう、謝らないでください」
「あ、ごめんなさい」
「ほら、また」
リリスを見るセラフィスの瞳はどこまでも優しい。リリスはセラフィスに抱きついた。
「後悔はしてません。あなたといられたことが、本当に嬉しいんです」
「え、、」
返される言葉。だが、それが過去形になったことに気づく。
どういうこと?そう言いかけた時、扉を叩く音がした。
「いらっしゃったようですね、、」
カルラの来訪はセラフィスにも届いていた。それがどいうことなのか
十分察しはつく。
セラフィスは扉あけた。
「ご無沙汰しております、カルラ様。どうぞお入りください」
部屋に入ると、カルラは不安げにこちらを見ているリリスに目を向けた。
セラフィスはリリスの手をとり、カルラと立ち会わせる。
「リリス、こちらはカルラ様。天界を統べる御方です」
「え、じゃあ、、」
とたん、今まで押し殺してきた不安がリリスを襲った。
「あ、あの」
「リリス?」
「あたしのせいなんです。あたしが一緒にいたいって言ったから。だからセラフィスは何も」
「落ち着いて、お嬢さん」
カルラは優しく声をかける。
「大丈夫ですよ、様子を見にきただけですから。ただ少しだけ、2人で話をさせてもらえますか?」
「ごめんなさい、、失礼します」
不安を残したまま、リリスは部屋を後にした。