訪問者(U)

「ソレア、、どうやって行くんだろう」

受け取ったメモを見ながら歩いていた。と、、

「え、ごめんなさい」

「大丈夫ですか」

「ルディさん」

ぶつかった相手はルディ。

「うん、大丈夫。あれ?」

「愁馬?」

「ない。どこに」

ついさっきまで手元にあったメモがなくなっていた。慌てて周囲を探す。

「あ、まって」

吹いた風に紙が舞った。それをルディが掴む。

「これでいいのかな」

「ありがとう。よかった」

「何か大切なもの?」

「そう、、、。ガレリアさんが見つかったんだ」

「、、、、、ガレリア」

「ほら、この前話したでしょう。昔近くに住んでた」

「ええ、覚えていますよ」

「同じ通りにある写真屋さんにガレリアさんのがあったんだ。
 どこに住んでるのか教えてもらった。これで会える」

愁馬は本当に嬉しそうだった。一方のルディは複雑である。

先にガレリアに愁馬のことを知らせてから、2人を引き合わせるつもりだったのだ。

心構えがいるのは、きっとガレリアのほうだから。

「ルディさん、ソレアっていう町にはどうやって行けばいいの」

「愁馬、立ち話もなんですから、私たちの店へ来てもらえませんか。
 少し話したいこともあります」

「いいけど、、、どうしたの?難しい顔してるよ」

「着いたら説明します」

先に歩き出したルディの後を追う。店に着くまでルディは黙ったままだった。


「こんにちは」

「あら、、」

愁馬を連れて戻ったルディにアントワネットが小さく呟いた。

「お茶を頼めますか」

「ええ。座っていて」

「ほどなくいい香りがたった。一息いれてルディは話をきりだす。

「ガレリアがどこにいるのかは私も知っています」

「ルディさん?」

「先に愁馬のことをガレリアに知らせて、それから引き合わせるつもりでした」

「、、、それは、あまり会わせたくないってことなの?
 何の連絡もなしで僕が行ったら、迷惑ってこと?」

場の雰囲気を読み取りやすいのだろう。嘘や誤魔化しはきかないと判断した。

「愁馬と別れてからのことは、ガレリアのほうから話す気になるまで待って下さい。
 今は望む形で落ち着いているけれど、そうなるまでのことは進んで
 話したいようなことじゃない。ただこれは私の判断です。
 だから、その判断をガレリア自身にさせてあげてほしい。
 どうか、お願いします」

ルディの言いたいことを考えてみる。だが愁馬が感じたのは寂しさだった。

「あの頃みたいに遊んでもらえないのかな。ガレリアさん、変わったの?」

「私は愁馬といた頃のガレリアを知らないけれど、変わっていないと思いますよ。
 昔愁馬に言った言葉を私にもくれた。希望を与えてくれます。
 あの写真そのままに」

「わかった。わかったから、会いにいってもいい?」

「一緒に行きましょう」

ルディのその言葉に驚いたのはアントワネットだった。

愁馬のことを知らせて、そこから先はガレリアの判断を待つつもりでいたのだが。

「ただ、今言ったように先にガレリアに連絡をつけたうえで、2、3日の時間をください」

愁馬にはまだわからないことのほうが多い。

それでも、ルディのいうとおりにしたほうが今のガレリアにはいいのだろうと思う。

少なくとも今のガレリアを知っているのはルディなのだから。

「じゃあ、、、行ってもよくなったら教えてね」

「ええ、必ず。ありがとう」

「また来ます」

店を出る愁馬を見送り、ルディはアントワネットに向き直る。

「ルディ、行くつもりだったの?」

「急にすみません。この並びに写真屋があるでしょう。あの写真、見ましたか?」

「あ、、、」

そういわれて思い当たった。

「あの写真、愁馬も見たのね」

「店の主からガレリアの居場所を聞いたようです。
 来る途中で愁馬と会って、ソレアへの道を訊かれました。
 今のガレリアと会うのなら先にガレリアに知らせたほうがいいだろうと考えて
 それで、こういう話になったんです」

「わかったわ。今受けてる依頼も2,3日あれば」

「今回は愁馬と2人で行かせてください」

「、、、どうして」

ルディの指がそっと、アントワネットの頬にふれる。

その感覚はあの祭りの夜に似ていた。叶わない恋を演じたあの日。

「ルディ、何を考えてるの」

「2人を会わせて、手術のことも伝えてきます。
 いない間のことは瑞樹に頼んでいきますから」

「答えになってないわ」

「少なくとも、私自身の意志で貴女を独りにはしません」

「ルディ、、、」

アントワネットを腕に収めて瞳を閉じた。

「それだけは約束します。アントワネット、信じて」

「、、、あまり遅くならないでね」

「はい」



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