「何のつもりだ」

「あら、ただの挨拶よ」

先ほどの少女と向かい合っているのはライゼルの兄セレスティア。

「いいじゃない、あと2、3日もすればあたしの物になるんだから」

「、、、、、」

セレスティアは少女を睨みつける。だがそれさえも楽しむように少女は笑った。

「あなたのその顔も嫌いじゃないけど、いい加減諦めたらどうなの。
 契約は終わらない」

「黙れ」

「そう、続くのよ。誰にも終わらせることなんて出来ない」

「黙れと言っている!ぐ、、ぁ」

ギリと胸が痛んだ。膝が折れる。

「あなた自身は生きたいと望んでいないみたいだけど、ライゼルを独り残して逝ける?」

「、、、、、」

「強情なんだから」

少女はセレスティアの顎に手をかけると、くいと上を向かせる。

「は、、な、、せ、、」

払いのけようにも身体がいうことをきかない。

「ん、、、」

重なった唇の隙間からくぐもった声が漏れた。全身から力が抜けていく。

少女は口付けを終えるとセレスティアの首に手をかけた。ぐっと爪を食い込ませる。

「く、、、は、、、」

赤い筋が浮かんだ。

「、、、私のことは好きにしろ。だが、ライゼルには手をだすな」

「わかってないのね。あなたに何かあったらライゼルだってまともじゃいられないわよ。
 独りでこの契約に耐えられると思うの?己の身で試したいのならそれでもいいけれど」

扉に手がかかる音がした。

「兄さん、いる?」

「来るな!」

力任せに少女は爪を引いた。

「ぐあっ!」

「兄さん!」

ライゼルが飛び込むと同時に少女の姿も消えた。

ライゼルは不安そうにセレスティアを覗き込む。

「大丈夫だ。見た目ほど深くない」

「彼女が来てたんだね」

「ああ」

セレスティアはソファへ戻ると大きく息を吐いた。

「どうして、、どうして彼女は兄さんだけを」

「考えなくていい」

「でも!」

セレスティアはライゼルを抱き寄せる。

「お前は諦めるな。終わらせる、終わらせてみせる。
 だから諦めるんじゃない。いいな」

何を訊いても、何を言ってもそれ以上の言葉は返ってこない。

ライゼルは頷くことしか出来なかった。


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