「さて、、どうするかな」

森の入り口でフォレスは決断を迫られていた。

商談の帰り道。思ったよりも長引いてしまい、空を見上げれば夕闇が近い。

森を抜ければ近道だが、普段でさえ光が入りにくい森で
夜になってしまえば足元を見失う。

かといってここを避ければ倍以上の時間がかかった。

(知らない道じゃないし、夜になる前に抜ければ何とかなる)

賭けではあったがフォレスは森へと進んだ。

「嘘だろう、、こんなに早く」

夜はフォレスが考えていたよりも足早にやってきた。唯一の灯りはランプだけ。

足元を照らしながらゆっくりと進む。

不意に背後で音がした。灯りを向けるが音だけで姿を見せる様子はない。

らちがあかないと向きを変えたときだった。

「え?うわっ」

足元が崩れた。

そう高い所から落ちたのではなさそうだが
足を痛めたのか動くことができなかった。

人が通るのを待つにしても夜は冷える。まして今の季節では。

(仕方ないか、、、)

思いのほか、あっさりと諦めがついた。フォレスは目を閉じる。

目が覚めたとき、自分は何処にいるのだろう?そんなことを考えながら。


「ん、、、、」

フォレスはゆっくりと目を開けた。そしてぐるりと周囲を見渡す。

「何処だ、、、」

見知らぬ部屋のベットの上だった。怪我の手当てもされている。

生きていることに感謝をすると同時に、夜にあの場所を人が通ったことに驚きもした。

静かに扉が開いた。

「気がつきましたか」

そう声をかけてきたのは、銀色の瞳に真珠を溶かした髪をした青年。

(魔物?)

ふとそんな疑問が浮かぶ。それを察したかのように青年はクスリと笑った。

「ご安心を。こう見えても人ですから」

「すみません」

「いえ、気になさらずに。生まれつきこうなんです。
 それと、もっと楽に話してくれて構いませんよ」

「じゃあ、遠慮なく。助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。遅れましたが僕はライゼル」

「私はフォレス」

「ここには僕と兄しかいませんから、治るまでゆっくりしてください」

と、そこに声が割って入った。

「あたしもいるわよ」

部屋に入ってきたのは緑とも青ともとれる髪をした一人の少女。

名乗ることもせずにフォレスの顔を覗き込むそして、いきなり口付けた。

「止めてください。フォレスは客人です」

少女は止めに入ったライゼルを横目で見ると、ようやく離れる。

「あなた、、、いい人ね。楽しみだわ」

謎懸けのような言葉を残し、少女は部屋を出て行った。

「すみません。失礼しました」

「ライゼルが謝ることじゃないだろう」

「、、、後で言っておきます。あるものは自由に使ってくださいね。
 それではまた後ほど」

ライゼルは静かに部屋を出て行った。

外は闇に包まれている。

還らずの森。この森がそう呼ばれていることを、フォレスは思い出していた。


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