回顧録
戒流、麗羅、珠莉、遥斗、柚葉の昔話です。
テキストのみで写真はありません。
大小様々な船で賑わう港町。物と人が行き交う船着場に、ひときわ美しい女神像をフィギアヘッドに持った船が入った。
船を固定するとパラパラと船乗りたちが下りてくる。
その様子を甲板から眺めているのは船のキャプテンで名は戒流。その戒流の元に足音が届いた。
「親分、全員無事です。異常なし」
「ご苦労さん」
報告を持ってきた珠莉に、戒流は微笑を返した。この船では一番年下だったが腕は確か。戒流も信頼をおいている。
「今夜はいつもどうり遥斗さんの店でいいんですか」
「ああ、いいよ」
「けど、航海のたびにおごってたんじゃ稼ぎにならないんじゃありません?」
「余計な心配するな。全部使ってるわけじゃない」
「ならいいですけど。あ、、親分」
「ん?」
珠莉が指した方向を見れば、人ごみの中に戒流の弟の麗羅と、名前のでた酒場の主である遥斗がいた。
「来てたのか。珠莉、今夜な」
「了解」
「気づいたようだよ」
遥斗は隣の麗羅に声をかける。
「無事に帰ってきたんだ。よかった」
麗羅の瞳には何も映らない。戒流と2人きりの生活のため、航海の間は遥斗と暮らしていた。
近頃は長い航海が多く、遥斗はもう1人の兄でもあった。暫くして2人のもとにたどり着いた戒流は麗羅を抱き寄せる。
「ただいま」
「お帰り、兄さん。船の皆も無事なの」
「全員無事だ」
「てことは、今夜もいつもどうりだな」
遥斗が呟く。航海が無事に済んだ夜は、遥斗の店での宴会が常。必要な量をはじき出す。
「もう少し集めとくか」
「遥斗、今日こそはちゃんと受け取れよ」
「何の話だ」
「こっちで渡してる金じゃ足りてないだろう」
稼ぎから宴会代を払ってはいるが、どうみてもそれ以上の酒を空けている。
好きなだけ飲めと言っている以上量を制限するつもりはないし、全額払うといっても遥斗は一定額以上を受け取ろうとはしなかった。
「またその話か。貰ってる分で足りてるよ」
「嘘付け」
「どうしても気になるんなら、少し置いていってくれればいい。ここじゃ手に入らない珍しいやつをな。
まだ最後の仕事が残ってるだろう。終わらせて来い」
結局は同じやり取りで終わる。戒流は小さくため息を落とした。
「わかった。けど、いつかまとめて払うからな。麗羅、また後で」
「うん、今夜ね」
ざわめきの中に消える戒流を見送る。
「次の航海まで、どれくらいあるんだろう」
ポツリと落ちる言葉。ひとつの仕事が終われば、またすぐに次の依頼が入る。
それは、戒流たちが信頼されている証でもあるけれど、ここ何年かは海に出ていることのほうが多かった。
「もうすぐ誕生日だったな。まさかその日まで仕事はいれないだろう。いて欲しいって、言っとけばいい」
「兄さんの仕事の邪魔にはなりたくないもの。あ、、でも遥斗もお店あるもんね。ごめん、、え」
遥斗の腕の中にいた。
「ほんと、可愛いな」
「遥斗、、」
一瞬だけ、麗羅は抱き返す。
「戻るか」
麗羅の手を取り、店へと引き返す。太陽は真上から眩しい光を投げていた。