


透明な糸([)
「銀月、、、銀月、、、遠くはないってルディさん言ってたけど」
丘から町の中心に戻ったレイスとガレリアは画廊{銀月}を目指していた。
通りに並ぶ店を確認しながら歩いていると
「あれじゃないのか」
レイスが一軒の店を指した。
「知ってたの?」
「いや」
「よくわかったね。看板見えないのに」
「古めかしい店構えだからそうじゃないかと思っただけだ。
合ってるかは知らん」
「レイス、、、、」
くすりと笑いのおちたガレリアをレイスは不思議そうに見返した。
「おかしいか?」
「真顔で言う人も珍しいと思うよ。とりあえず行ってみよう。
あ、それともやっぱり、子供は苦手?」
正直な本音は
ガレリアと愁馬が会っている間一人でふらついていた方が楽だ。
けれど、ガレリアの傍を離れたくないというのもある。
ルディとの過去を知ったばかりの今は尚更だ。
レイスはガレリアを優先させた。
「別に構わない。初めての相手じゃないしな」
「よかった。ありがとう」
「行くか」
「うん」
店の前で一呼吸おき、扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
掛けられた声に会釈を返しガレリアは店を見渡すが、愁馬の姿はなかった。
「何かお探しですか」
ガレリアは瑞樹に向き直った。
「ガレリアといいます。愁馬がここにるって聞いたのですけど」
「、、、、では、あなたが。私は瑞樹。
お名前は愁馬から聞いていますよ」
互いに、それぞれの名前を聞いた時のことを思い出していた。
瑞樹は『一番強い想いを大切にすれば大丈夫』という言葉。
ガレリアはソレアの丘での会話を。
「呼んできますね。少し待ってください」
そう言った瑞樹は一度奥に入った。
先に出てきたのは愁馬。一歩遅れて瑞樹も戻る。
「ガレリアさん、、、」
「今度は僕達が来たよ。元気だった?」
「うん」
「変わりなさそうだな」
レイスが見せた表情は先の時よりも和んだものだった。
それは愁馬にも伝わり、緊張したような硬さはなく笑顔が浮かんだ。
「レイスさんも来てくれてありがとう。お茶入れるね、待ってて」
ほどなく、いつもの薔薇の香りがふわりと香った。
「ガレリアさんたちは、どうしてキエヌに」
「ルディさんのお見舞い。手術したって聞いたから。
キエヌで愁馬がどうしてるかも知りたかったし」
「ガレリアさんはキエヌにいた頃、このお店来たことあるの?」
「僕はないな」
「レイスさんは?」
「私も無い。必要最低限、屋敷からは出なかったからな。
画廊というわりには絵画は少ないようだが」
「私の前のオーナーが経営していたころは絵画中心でしたが
譲り受けた後に少し品を入れ替えています。
今は{工房・ローゼンタ}の品が中心ですね」
「何を扱っている工房なんですか」
「家具が八割方ですが、最近は焼き物も始めました。
これからが楽しみですよ。
そうだ愁馬。工房で作ったあれ、見てもらったらどうだ」
「え、、、でも、下手だからいいよ」
「何?」
「あの工房は一般にも開放している部分があって
簡単な物なら作ることが出来るんです」
「見てみたいな」
「、、、、笑わない?」
「うん」
「絶対?」
「絶対。約束」
「、、、、持って来る」
観念した愁馬は店の奥へと入った。