

透明な糸(Z)
それから暫くして、市場で一緒になったという3人が戻ってきた。
フィータは抱えた袋を静かにテーブルに置いた。
「何を買ってきたんだ」
「ケイオスにはお酒。それから、はい」
フィータは片手に収まる袋をアリエルに差し出した。
「私?」
「うん。みんなでおそろい」
「俺とアリエルとフレデリック。
同じものが欲しいって言うから色違いで4つだ」
「フィータ、、、」
考え込んでしまったアリエルに、フィータは顔を曇らせた。
「アリエル?、、、気に入らなかった?」
「いいや。ありがとう」
アリエルは優しい眼差しをフィータに向ける。
何を迷う必要があるのだろう。
フィータたちと一緒に暮らす今を守りたい。
それがアリエル自身の望みだったはず。
アリエルの眼差しに、フィータにも嬉しそうな笑みが戻った。
「こっちも終わったから一度宿に戻るか。御世話になりました」
「いいえ。工房との商談、上手く進むよう願っています。愁馬、あの葉少しわけられるか」
「うん」
奥に入った愁馬は、数回分の茶葉を袋に詰めて戻った。
「どうぞ。ぬるめのお湯でゆっくり入れると綺麗な色になりますよ」
「ありがとう。君が入れるように美味しくできるかわからないけど、使わせてもらうよ」
そう褒められて、愁馬は子供らしい笑顔を見せた。
「それではこれで」
「またいつでもどうぞ。お待ちしています」
店を出た3人を見送ったあと、カップを下げようとした愁馬に瑞樹は声をかけた。
「愁馬のこと褒めてたよ。礼儀正しい、しっかりした子だって」
「ほんと?」
「ああ。あいつに似たんだろう」
瑞樹は愁馬の父のことを思い出していた。
真面目すぎて固いところもあったが本気で心配してぶつかってくれた。
瑞樹は愁馬の頭をくしゃりとなでる。
「私が親代わりじゃあいつも心配だろうけど、これなら安心だな」
「瑞樹さん、、、」
愁馬はそのまま瑞樹を抱き返した。
「瑞樹さんでよかった。一緒にいるの」
「愁馬、、、」
「瑞樹さんなら、瑞樹さんの子供になってもいいな」
「それは駄目だ」
「、、、、、」
「思ってくれるのは嬉しいけど、あいつのこと
自分の親のことを誇りにしてほしい。
あいつの子供だって、自慢できる愁馬でいてほしいから」
「うん、、、でも、瑞樹さんのこと父さんの次に好きだよ」
「ありがとう」
純粋に慕ってくれるその想いは、瑞樹にとっても救いに似たものだった。
あたたかく優しい何かを与えてくれるのだ。そして瑞樹も与えてやりたいと思う。
瑞樹を見つめる瞳は美しく澄んでいた。