透明な糸(Z)


画廊{銀月}。

「瑞樹さん、お手紙きたよ」

「ありがとう」

お茶をくゆらせていた店主の瑞樹に、愁馬は手紙を差し出した。

受け取った束をばらしていくと、家具工房{ローゼンタ}からの封書があった。

内容は、現物を見たいというアリエルの申し出に対する返答で、お待ちしていますとのこと。

次はこれをアリエルたちに渡すわけだが、愁馬を一人で店に残したくはない。

少し早く店を閉めて、宿に足を向けようと考えた。

「ん〜」

座ったまま大きく背を伸ばす。

若干ではあるが父の仕事も手伝っているため
画廊にいてもそちらの書類を手元に置き、逆もまたしかり。

ここ数日は、浅い眠りが続いていた。

「瑞樹さん、お茶の葉変えようか」

「そうだな、新しいのもらえるか」

ほどなく、新しい茶葉の香りが広がった。

差し出しながら、愁馬は心配そうに瑞樹を見た。

「どうした」

「おじいさまが心配してた。
 瑞樹さんのこと忙しくさせてるって」

「言うほどでもないさ」

「夕ご飯、おいしいものたくさん作ってもらおう」

「いや、待て。メイドたちが聞いたら、何日分でてくるかわからないぞ」

「そう、、、なの?」

メイド頭からコックたちに伝われば、体力がつくようにと2,3日分が一回で出てくるだろう。

その量にげんなりし、逆に食欲が失せたことは一度ではない。

「元気になるどころか、逆に食欲が落ちる量が出てくる。ちゃんと休むから大丈夫だよ」

「うん、、、わかった」

愁馬の頭には、目の前を覆う量の食事が浮かんでいた。


カランと扉のベルが鳴った。

「いらっしゃいませ。、、、これは」

「先日はどうも」

入ってきたのはアリエル一行だった。

背中を向けていた愁馬も3人に向き直り、愁馬がここにいることにオルガは驚いた。

「君は、サルバスでルディと一緒だった(ルディの子供じゃなかったのか)」

「こんにちは」

「愁馬、知ってるのか?」

「えっと、この前ルディさんにソレアに連れて行ってもらったでしょう」

「ああ」

「途中のサルバスで、、、」

怪我をしたオルガとの一件は瑞樹に話していなかった。

その時のことを最初から話していいのか迷った愁馬に
アリエルが言葉を添えた。

「サルバスで私の宿を利用いただいたんです」

「アリエル?」

首をかしげたフィータに黙っていろと小さく首を振る。

ぎこちなさを感じた瑞樹だったが
納得したほうがいいのだろうと言及はしなかった。

「そうでしたか。こちらこそ愁馬が御世話になりました。
 では、そちらが弟さんと友人の方ですか」

「弟のフィータと友人のオルガです」

「初めまして」

「こんにちは」

「店主の瑞樹です。愁馬は改めなくても大丈夫ですね。
 愁馬、新しいお茶を頼むよ」

「はい」

店の奥に入る愁馬を見ながら、一体誰の子供なのかという疑問がオルガに浮かんだ。

「丁度良かった。先日の件、今しがた工房からの返答がきたんです。ここでかまいませんか」

「アリエル、お仕事?」

「ん、ああ」

「オルガ、行こう」

くいと、フィータはオルガの腕を引く。

「アリエルがお仕事のときは、オルガと一緒でしょう」

「そうだけど、、、じゃあフレデリックとケイオスの土産でも探しに行くか。アリエル、適当に時間潰してくるよ。ここに戻るから」

「悪いな。気をつけて」

「また後でね、アリエル」

出て行く2人を見送るアリエルは、どこか寂しさを覚えていた。


 BACK NEXT