透明な糸(X)


「ただいま」

「どうだった?見つかったのか?」

戻ったオルガにアリエルは詰め寄っていた。

そんなアリエルを静かにソファーに戻す。

「落ち着け。どこにいるかわかったよ」

「、、、連れて帰らなかったのか?」

居場所がわかったうえで一人で戻ったオルガを
不思議に思うのも無理は無いだろう。

アリエルの想像は悪いほうに向かった。

「怪我して病院とか、騒ぎ起こして警察とか
 まさか、そっちなのか?」

「サルバスで怪我した俺を拾ってくれたルディ、覚えてるか?」

「ルディ、、、ああ、、あの時の」

鮮やかなアメジストとエメラルドの瞳が浮かんだ。

「少しややこしいけどな。
 ルディの知り合いが偶然キエヌに来てる。
 俺たちを探し回っていたフィータが
 その知り合いの取った宿にも行ったんだ。
 そこで一騒ぎあって、フィータが出した俺たちの名前を
 その知り合いが聞きつけてくれた。
 で、ルディの家へ連れて行って、今はそこで落ち着いてるよ」  

オルガの言葉を順番に整理してみる。

ルディと自分達の間に認識があるのはわかるが
その知り合いはどうして結びついたのだろう。 

「その知り合いっているのは誰なんだ。
 私達とその時のことを結び付けられるなんて」

「俺とルディの共通の知り合いだ。
 俺がキエヌにいた頃、アリエルたちと会う前の」

「、、、、、」

「運のいい偶然が重なったんだよ。
 今のルディなら一晩預けても大丈夫だろう」

一度会っただけではあるが顔はわかる相手。

オルガの昔の知り合いというのも嘘ではないだろう。

「、、、一晩預けられる相手なんだな」

「ああ。一眠りしたら迎えに行こう」

オルガが信用できる相手ならと、アリエルも納得しようやく一息ついた。

そしてオルガが傷を負ったあの一件を考えた。

「あの時、たちの悪いやつにからまれただけだって言ったよな」

「、、、、ぶつかった相手が金をよこせっていうから
 行こうとしたらナイフを出されただけだ。
 そのまま逃げたからどこの誰かはわからない」

本当は昔の客とのトラブル。

けれど、真相を告げず過去のことも話さずにいた。

出て行けと、その言葉を聞くのが怖い。

「一眠りしてくる。また後で」

突っ込まれたくなくて、オルガは足早に部屋を出た。

昔のことは聞かない約束だから、アリエルも今の事までは踏み込めなかった。

3人で暮らしている今が続いてほしいと願う。

そのために必要なことなら受け入れたい。

耳をふさぐのではなく、話を聞く耳は持ちたい。

「無理なのかオルガ。黙っているほうが辛そうだ。ん、、、今の季節に?」

何気に見た窓の向こうで、季節外れの蝶が舞っていた。


「、、、まだかな」

待つだけしかできない時間がひどく長く感じられた。

何度となく時計に目を向けても針は止まっているかのようだ。

と、しんと静まりかえっていた部屋の扉がようやく開いた。

「レイス、、、、」

駆け寄ったガレリアはレイスを強く抱きしめた。

「、、、ルディさんの前でも変わらない。だから、、今夜だけ我侭でいさせて」

「どんなに我侭でもかまわない。私はお前だけのものだ」

それぞれにとっての長い一日がようやく終わろうとしていた。


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