


透明な糸(V)
「ルディさん、元気そうでよかった」
「2人も落ち着けるだろう」
ルディたちとの夕食を終え、レイスとガレリアも宿に戻った。
と、宿のロビーでは押し問答の真っ最中だった。
一人は宿の従業員で、もう一人は客だろうか。
鍵を受け取りながらガレリアが訊いた。
「何かあったんですか?」
「人を捜しているようなんですが、自分が泊まっていた宿がわからなくなって、訊き回っているようなんです」
フロントの男は一度言葉を切り、小声になった。
「宿の名前もわからない。あげく、ロビーでいいから少し眠りたいと言い出して。
どうやら、、その、知恵遅れではないかと」
「なら、警察か病院に知らせたらどうなんだ」
「しました。もうそろそろ、、、。ああ、やっと来たか」
ほっとしたな呟きに、レイスたちは振り向いた。
数人の男がロビーに入り、周りを囲む。
「、、、、あれじゃあ」
本当にフロントの男の言う通りなら、怯えるだけではないのか。
ガレリアの危惧はすぐ現実になった。
「やだ!離して!」
「お騒がせしてすみません。すぐ終わらせますから」
フロント係りは早く連れて行けとばかりに横目で見る。
手荒いわけではないが
囲まれた相手は怯えて振り払おうと必死だった。
男達は多少強引でも仕方ないと判断したのだろう。押さえ込んだ。
「う、、、アリエル、、オルガ!」
「オルガ?」
「レイス?知ってるの?あ、、待って」
レイスは男達に寄った。
「離してくれないか」
「あなたは」
「今出たオルガという名前を知っている。それに、どう説得しているか知らないがもう少し相手を見るんだな」
すごめば迫力はレイスのほうが上だ。男達が怯んだ。
「手を離せ。後はこちらで聞く」
「は、、、はい。では」
食い下がることなく、宿を出て行った。
「レイス、、、どうするの」
「先に落ち着かせてくれないか。説明は後でするから」
「うん、、、わかった」
オルガもフィータも、ガレリアの知らない名前だった。
先に説明を聞きたいと、どこかで思うが
今はレイスの判断に従うことにした。
「大丈夫?」
「あ、、の、、、ごめんなさい」
「怒ってないよ。名前教えて。僕はガレリア。隣はレイス」
「フィータ。アリエルとオルガ、何処にいるのかな」
「お家はどこ?」
「サルバス。アリエルのお仕事が終わったら帰るよ」
「(もしあのオルガならルディが会っているはずだ。
サルバスが住まいだとすると、間違いないだろうな)」
このまま一晩預かるか。
あるいはルディとフィータが互いを認識できるのなら
ルディたちに預けられないか。
レイスには夜に他人をいれたくないというのも少しある。
「フィータだったな。ルディという名前に覚えがあるか?」
「ルディ、、、?」
「長いブロンドで左右の瞳の色が違う。緑と紫だ。
サルバスで一度会っていると思うんだが」
「緑と紫、、、、」
フィータはサルバスの出来事を思い返してみた。
浮かぶ顔を辿ってみる。と
「あの人、、、オルガを連れてきてくれた人かな」
家を訪ねてきた誰かと外に出て、なかなか帰ってこなかったオルガ。
そのオルガを連れ帰ってきた相手が、たしかその瞳の色だった。
「顔は分かるんだな」
「うん」
「そのルディがいいと言ったら
今夜はルディの家で休ませてもらうのはどうだ。
オルガとアリエルを捜すのは、明日私達も手伝うから」
「レイス、、、、、」
レイスの過去。自分と会う前のレイスに出会うことになる。
それをガレリアは確信した。
聞きたくないと耳をふさげば、レイスは何もいわないだろう。
だが、向き合う強さを今のガレリアは持っている。
「ルディさんのところに行く間は僕が一緒にいるよ。フィータ、それでいい?」
「ガレリア、、、、」
「オルガとアリエルに会える?」
「大丈夫、会えるよ」
「ありがとう。出来るだけ早く戻る」
レイスはルディたちの家に向かった。