透明な糸(]U)


店を出た2人はルディの事務所へとやって来た。

「あれ、、、、」

「出てるのか」

到着したものの、扉には外出中との札がかかっている。

「キエヌを出る前に会いたかったけど」

「また来ればいい。それだけのことだ」

「、、、、うん。そうだね」

顔が見たくなったら会いにくればいい。

このキエヌで過ぎた数日を思い返し気がついたことは
当たり前すぎて忘れていたことなのかもしれない。 

「じゃあ、レイスが寄りたい所行こうか」

「ああ」

離れる2人を、アメジストとエメラレルドの瞳が見送った。

「会おうと思えば、すぐに会えますよね」

ルディはキエヌとソレアを繋ぐ空を見上げる。

それは美しく、高く澄んでいた。


何も言わず歩くレイスの後を、ガレリアも黙ったままついていく。

足を止めたレイスの前にあったのは、空き家だった。

つたや雑草が絡み、家はまるで飲み込まれているよう。

不気味な静けさをもって佇んでいる。

「昔、鳥になる前に住んでた家だ」

「レイス、、、、」

「昨日お前を待ってる間、昔の夢をみた」

「、、、、」

レイスはペンダントを取り出した。

夢の中での感覚は、目覚めている今も鮮明に残っている。

「今頃どこで何をしているのか。生死もわからないけどな」

ガレリアがそっと体を寄せる。夢の中の弟と同じように。

そんな2人の前に、白い何かが落ちてきた。

見上げた頭上には一羽の鳥。

何度か旋回すると、天に向かっていった。

「鳥は、自由であってこそ鳥か」

「でも、自由を望まない鳥だっているよ」

「ガレリア、、、」

「僕はレイスの隣にいられればいい」

掠めるような口付けをしたレイスは、ペンダントを錆ついた門にかけた。

「置いていっていいの?」

「この家に残していくほうがいいだろう。ソレアでの生活には必要ないものだ」

「レイス、、、、」

「帰ろう。私達の家に」

忘れるつもりはない。だが、ソレアでの暮らしが現在であり、それはガレリアも同じ。

弟と歩いた道を、ガレリアと2人、ゆっくりと歩き出した。


それから暫く後、同じ廃屋の前で一人が足を止めた。

「何か、、、光った」

門の一点が陽を受けて光を放っていた。

門に近づき、窺ったそこにあったのはペンダントだった。

「まさか、、、そんなこと」

それを外し、忍ばせている自分のものと比べる。同型の色違い。

「、、、生きて、このキエヌに?」

生き別れ、行方知れずになってからどれだけ時が過ぎたのだろう。

忘れたことなどない。

「ファルアさん、どうしたの」

先を歩いていた愁馬が、止まった足音に振り返る。

「いえ、、、何でもありません」

かかっていたペンダントを懐に入れ、歩き出す。

このキエヌにいるのだろうか。同じ町に。

(生きていると、、、、信じていいですか)

願うように祈るように、ロケットを握り締めた。


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