

白銀の名のもとに
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ジャステアを連れてきたのは、ジャアステアの器が生まれた場所。 精霊によって作られた器は、薬師ではなく精霊によって癒される。 「やはり、こちらでよかったのですね。私はどうすれば」 「横になって休んでいれば器を保つ力を与えてくれます」 「、、、終わったら精霊が教えてくれるのですか?」 ここにいてほしいと願うのだが言葉にはできなかった。 だがその気持ちは知らずに出ており闇戯にも伝わった。 元よりジャステアを一人にするつもりもない。 「終わるまでここにいますから、お休みなさい」 「闇戯様、、、」 音もなく静まりかえった中、揺らぐ炎が寄り添う影を映し出していた。 |
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「お帰りなさいませ」
「イーリスは」
「まだお目覚めになりません」
「、、、、」
本城から離れに戻ったルトヴァーユはすぐにイーリスの部屋に向かった。
「イーリス、、、、」
呼びかけても、イーリスはベットに横たわったままで返事はない。
「本当に眠り姫になってしまうつもりなんですか?」
{嘆きの渓谷}を押さえたあの日から
イーリスは眠り続けたままだった。
出来ることは手を尽くし、あとは本人しだい。
目覚めると信じて待つしかない。
ルトヴァーユは離れに戻ればいつもイーリスの傍らにいた。
その日にあった事を語りかけ続けた。
それも、もう何日目になるのだろう。
「白銀の座と引き換えに助けられるなら、喜んで譲り渡すのに」
世界と引き換えに大切な人を失わないでほしい。
その闇戯の言葉に頷いた。なのにイーリスを失うというのだろうか。
「私では眠りを覚ます騎士にはなれないのかな」
あるわけないと思いながらも
ルトヴァーユは抱き起こしたイーリスに口付けた。
失いたくないと強く願う。
「、、、まさかね」
ベットに戻し、背を向けたその時
「ん、、、っ、、」
「イーリス?」
「、、ル、、ト、、」
確かに聞こえた。イーリスの手を優しく取る。
「いますよ。聞こえているのなら目を覚まして」
「、、、、ぁ、、」
眠り姫に目覚めの時がきたのだ。
「ルトヴァーユ、、、さ、、ま」
そっと抱き起こす。
「誰かに呼ばれていた、、、あの声は、、、」
「私が呼ぶ声で目覚めてくれたのなら嬉しいけれど。
イーリス、、、よかった。本当に」
「私、、生きて戻れたのですね」
「ええ、生きていますよ。
あなたを失わずにすんだこと、心から嬉しく思います」
「ルトヴァーユ様、、、」
「お茶をいれてきますね」
「、、、はい。ありがとうございます」
にこりと笑ったイーリスに頷き、ルトヴァーユは部屋を出た。
残ったイーリスは唇に触れてみる。
夢と現の境、朦朧とした意識の中で何かが触れた気がしたのだ。
優しい風が掠めたように。
「あるわけないか」
だが、もし思ったとおりのものだとしても嫌な気はしなかった。
物事の終わりは別の何かの始まりという。
イーリスとルトヴァーユの間に小さな何かが生まれた。
だがその何かが動き出すのはもう少し先の話である。