白銀の名のもとに


人の住む側のとある場所。捨て去られた地に白い翼が降り立った。

「闇戯様、戻りました」

館に戻り、主に声をかけるが返事は無い。

「、、、、闇戯様?外だろうか」

探しに出てすぐに、適当な段差に腰を下ろし月を眺める闇戯がいた。

「闇戯様」

「お帰りなさい」

共に争いの頃を知る白の双翼。

闇戯が有翼側から居を移して暫く後、ジャステアと思わぬ再会をした。

ジャステアは闇戯の傍らを望み、闇戯は望みを受け入れ今に至る。

「どうでした。向こう側は」

「白と黒が並んで共に在る光景は、慣れるまで時間がかかりそうです」

「あの頃を知っているのだから当然でしょうね。
 私は停戦から今までを見てきたからそうでもないけれど」

ジャステアは戦で一度命を終えている。

幾度かの転生を繰り返し
器を持たず揺らいでいたジャステアは人の側で闇戯を見つけた。

その声は闇戯に届き、闇戯は器を与えたのだ。

だからジャステアは停戦とその後の有翼側を知らない。

戸惑いも当然といえよう。

「停戦から長い時間が過ぎ、あの頃を知る者もほとんど残っていない。
 まあ平和なのは喜ぶべきなのでしょう。私たちに出来るのは忘れないことです」

「、、、、はい。それがあの頃を知る者の責務なのかもしれません。
 それから何人かの言葉で{嘆きの渓谷}が騒がしいと聞きましたが」

「あの場所が?そう、、、」

闇戯が表情を変えた。

「どのような場所なのですか」

「器を無くしてもなお、想いを残したままの精神が留まっている場所です」

「、、、、、」

「隔離されているからそのままなら害は無いけれど
 まれに暴れだすことがある。
 白銀が抑えに回っているということか」

「では、我々の同胞が留まっていることも」

「可能性はありますよ。けれど、いるのは同胞だけではない。
 数が集まっている分、一気に外に出たらやっかいです。
 絶対に自分から首を突っ込まないように。いいですね」

「、、、、はい」

昔の同胞がいるかもしれない。

それには魅かれる気もしたが
闇戯の命令に逆らうまでのことをするつもりはない。

「そうだ、イーリスという名前を覚えていますか」

「イーリス、、、、」

ジャステアは遠い記憶を辿った。

「イーリス、、、、あ、白の軍の将でその名前の方がいたかと」

「覚えていましたか。イーリスも生きていますよ」

「本当ですか」

「ええ。向こう側にいます。会ってみますか?」

「はい。お会いしてみたいです」

風が揺らいだ。妖しの里を抜けキエヌへ。そして湖へ。有翼側へ。

その風は同じ時代を知る者を繋いでゆくようでもあった。


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