「ここか」

ハワードはグラディスとフレイアの住む館にたどり着いた。

「父さん、、、」

追い求めた父の敵がここいる。胸元で十字を切り、足を踏み入れた。

広い館は静まり返っていた。既に出た後かと、次々と部屋を空けていく。

そして、中庭に佇む一人の影。

「来たか、、、、」

「あなたは、、、」

グラディスの姿にハワードは目を見張った。

「どうしてここに」

「どうも何も、ここは私の館だよ」

「何だと」

酒場での会話が瞬時によみがえる。

「敵を相手にあんな話を、、、、。可笑しかっただろうな。
 神妙に聞くふりをして、腹の中では笑っていたのか」

「ハワード、、、」

ハワードは剣を抜いた。

「ずっと探し続けた。父の敵。覚悟」

「(この日の為だけに生きてきたのか。
 すまない。、、、ありがとう)」

グラディスも応じる。

「その父の元に送ってやろう」

ギィンと剣が鳴った。

互いに忘れることの無かった面影。巡った時が用意した最悪の再会。やがて、、、

「っ、、ぐあ」

「、、、、」

倒れたのはグラディスだった。だが、ハワードは気づいた。

「、、、何のつもりだ」

「私の負けだ」

「ふざけるな!譲ってもらう勝ちなどいるか!」

「、、、、、」

グラディスはわざと引いたのだ。

「答えろ」

「この日の為に生きてきたんだろう。何も考えるな。
 目的を達成させることが、私に出来る償いだ」

「、、、何故わざと引いた」

「、、、、、」

「私がここにくるとわかって、どうして逃げなかった」

頭の片隅に一つの可能性が浮かんだ。

「まさか、、、、あなたは」

「違う」

「、、、父さん?」

「、、、、終わりにしよう」

ハワードから剣を取り、自ら首に当てたその時

「待って!」

2人の前に飛び出したのはフレイアだった。

「、、、、フレイア、、来るな!行け!」

「、、、父さんなんだな」

ハワードは剣をグラディスから奪い取った。

「あんなに小さかったのに
 いつの間にか私の背を追い越していたのね」

「フレイア、、、やめてくれ、、、」

「ごめんなんさい。
 あなたが、、、これを選ぶような気もしたの」

フレイアはグラディスを抱きとめた。

「この人はあの時生き別れたあなたの父親。
 そして森に住む魔物といわれているのも私たちよ」

「何があったんだ、あの時」

「討たれるのはかまわない。
 けれど、どうか真実を知って。父の、本当の思いを」

「わかった」

「ハワード、、、、」

「つかまれ。知る権利はあるだろう」

「、、、そうだな」

裂いたドレスを傷にあて、館の中に戻った。


汚れた服を換え、ソファーに落ち着く。

「私とこの人と、どちらから聞きたい」

ハワードはグラディスを見た。フレイアは黙って席を外した。

「あの日、動けなくなった私たちを見つけたのがフレイアとその仲間だ。
 森に住む魔物の噂は昔からあっただろう。お前だけでも助けたかった。
 だから、もし本当に魔物なら私と引き換えに子供だけでも助けてほしいと頼んだんだ」

「、、、、、」

「それに、道を踏み外した時体中打ち付けた。
 致命傷だと、、、、わかった」

庇うように抱かれていた、あの時の感覚がうっすらと蘇る。

「どのみち助からない。そう思った。いや、助からなかったんだ」

「だから、、、仲間に?」

「彼らは闇の中でひっそりと生きてきたヴァンパイア。
 今の私もそうだ。あの時から姿は変わっていない」

「自分から望んだのか」

「わからない。薄れていく意識の中で何を言ったのか。
 だが、、、生きたいと、そう願ったそうだ」

「どうして殺されようとした」

「お前は父の敵を討つために生きてきた。
 今の私が出来ることは、その目的を遂げさせること。
 追う者と追われる者。それだけで終わろうと」

「、、、だったら、最後までばれない嘘をつけ」

「ふ、、、本当だな」

「、、、一晩考える」

部屋を出ようと歩き出した背中に声がかかる。

「ハンター、ハワード」

「、、、、、」

「お前の父は死んだ。いいな」

答えずに部屋を後にした。


部屋の前にはフレイアがいた。

「あなたの望むように」

「、、、わかった」

入れ違いにフレイアが部屋に入った。

「逃げるつもりはなさそうだね」

「彼がどちらを望もうと、私はあなたといるわ。一人でなど生きられない」

フレイアにとっては所在のわかる最後の仲間だ。討たれるなら、むしろ本望。

「、、、、最後まで一緒にいさせて」

「ああ」



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