森に包まれ佇む館。

静寂と月明かりが支配する夜を、静かに見つめる眼差しがあった。

「とうとう2人だけになってしまった」

「ああ、、、」

人の傍らで闇に生きる命、ヴァンパイア。

ハンターに討たれ、あるいは逃げ続ける中で
仲間は一人減り二人減り。

今この地に生きるのはフレイアとグラディスの2人だけ。

「あなたに助けられてからどれだけ過ぎたのだろうね」

「、、、、、」

グラディスは森に隣接する村に住む人間だった。

遠い昔、この森でまだ幼かった息子と遭難した。

2人を見つけたのがヴァンパイアであるフレイアとその仲間だった。

傷を負ったグラディスは息子だけでも助けてほしいと懇願し
息子は森の入り口まで戻された。

そしてグラディスは、闇の住人として命を繋いだのである。

「今頃、、、どうしているのだろう」

生きていれば幼い少年は立派な青年に成長しているだろう。

見た目はあの頃から時の止まった自分の姿と
そう変わらないかもしれない。

「私たちの選択は」

「言わない約束だよ」

言いかけたフレイアをグラディスは止めた。

「こうなったことを恨んでも憎んでもいない。
 どのみち会わなければ、終わっていた命だ」

「グラディス、、、、」

「それに息子を助けてくれた。少なくともあの時は。
 私が君といる理由はそれで十分」

「ありがとう」

人の傍らで生きながら、決して人とは相容れない。

かつて人であった自分でも二度と戻ることは出来ない。

今はフレイアといることがグラディスの生きる意味。

フレイアはグラディスよりも遥か長い時を生きている。

フレイアを守るために討たれた仲間。逆に討ち取ったハンター。

長く生きることは、それだけ命を背負うこと。一人では重い。

フレイアはグラディスにそっと体を預けた。

「終焉の時はあなたといたい」

「出来るなら私も」

フレイアを支えるようにグラディスは優しく抱きしめた。


同じ頃。町の酒場の一角。

「戻ってきた、、、父さん」

腕利きのヴァンパイアハンターとして名の知れたハワードは、生まれ育った村に戻ってきた。

この手で父の敵を討つために。

幼少の頃、森で遊んでいたハワードは迷子になってしまった。

慣れている場所だからとつい時間を忘れ
帰る道を誤ってしまったのだ。

父のグラディスが探しにきてくれた。

だが、道の悪さもあって2人は遭難し
グラディスは傷を作ってしまった。

岩穴で動けずにいた2人を誰かが見つけた。

そして父と引き離され
気がついたら森を出てすぐの村の入り口に一人でいたのだ。

村人に発見され、教えられた。父は魔物に殺されたのだろうと。

父の亡骸をハワードは見ていない。

だが幼子は純粋にそれを信じ
森に住むという魔物を討つためにハンターの道を選んだ。

腕を磨くため各地を回り、村に戻ってきた。

村人は歓迎し、魔物退治を依頼してきた。

もとよりそのつもりだったハワードに断る理由はない。

「父さんの敵はきっとこの手で」

親子は追う者と追われる者になっていた。

目の前に迫る再会の時。闇に眠る真実はまだ見えない。


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