結婚記念日
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広大な領土を持つ大国。 第一皇女リイナと夫のクルツの一日は 「いつもと違う香りだね。それに、、、どこか覚えがあるような」 「あなたの国の物ですって」 「そうか、、、、」 クルツは隣国の第二皇子だった。 自国は小さな国だった。 軍事力、財力、産業。どれもこの国には敵わない。 口には出さないが、誰もがわかっていた。 クルツは人質同然なのだと。 国に入った当初はクルツもそう思っていた。 だがリイナは、クルツを見下すことなく そんなリイナにクルツは救われたのである。 「早いものね。一年になるなんて」 「リイナ、ありがとう」 「何?急に」 「この一年、私は君に助けられた。 「あなた、、、、」 あどけなさを残しながらもリイナは強かった。 クルツを人質と見る臣も少なくない中で 人質ではなく、第一皇女の夫だと。 「このまま君と一緒にいたい。 「私も」 そっと寄り添う。 熱愛ではないけれど この暖かさをいつまでもと、2人は願った。 |
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年に一度の祭りの日が近づいた。 豊穣と繁栄を願い、国の守護神を讃える祭り。 リイナの兄であり、この国の青年王マテウスは 支度を終えたマテウスはクルツと2人になった。 「祭りが終われば一年がたつか。早いな」 「兄上」 「その呼び方もようやく慣れたか」 来たばかりの頃は兄と呼べなかった。 公の場では気をつけていたが、2人になると、つい名前で呼んでしまう。 すんなり兄と呼べるようになってから、そう時間はたっていない。 「リイナがいてくれたからだ。感謝している」 「そうか。始まりが何であれ マテウスも妹婿として常識をもっての扱いをしてきた。 多少厳しさは残っているものの 「警備の人数は増やしてあるが 「ああ」 短くはあったが気遣いをみせて、マテウスは出発した。 |
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夜。 「何だか落ち着かないわね」 「警備が厳しくなるのはしかたないよ。 「兄上は相変わらずだけれど。 「祭主が動揺していたら周りにも伝わる。 「ええ。それはもちろんよ」 クルツと兄が互いを認めていることはリイナも嬉しい。 どちらも大切な人だから。 「ん?」 「足音?」 ばたばたと、駆ける足音が聞こえた。 そして女官が珍しく慌てて駆け込んできた。 「大変です!」 「どうしたの」 「兄上に何かあったのか?」 「え?まさか」 「あ、あの」 「慌てるな」 女官の後ろからマテウスの声がした。 |
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「陛下」 「騒ぐなと言ったはずだぞ」 「す、すみません」 「兄上、何かあったの」 「下がれ」 女官を下がらせたマテウスは厳しい顔だった。 そして告げたのは 「神殿に入る直前で襲撃にあってな」 2人はすっと息をのむ。 「兄上、怪我は」 「傷はない。襲ってきた男は自害した」 「どこの誰が、、、、」 「それが問題なんだ」 「犯人の見当はついていると?」 マテウスが差し出した手の中に 「服の肩留めだろう。もみ合った最中に落ちたようだ。 「嘘だろう、、、、」 「あなた」 刻まれていた紋はクルツの国の物だった。 暗殺者はクルツの国の人間。 クルツはもちろん、リイナも言葉にならない。 「私を狙った人間がお前の国の者。 「兄上、馬鹿なこと言わないで」 先に否定したのはリイナ。 だがマテウスはクルツを見据えた。 「そんなこと考えてもいない。信じてくれ」 「そうよ、今話していたばかりだわ。 マテウスとて信じたくはないが 「わかった。ひとまずは信じよう。 「、、、、ええ、クルツに対しての疑いは残る。 「リイナ、、、、、」 「反発は極力抑えるが、お前に対する目が マテウスの立場も難しくなるのだろう。 それでも、この言葉をくれるマテウスに感謝する。 「そう言ってもらえるだけで心強いよ」 「ありがとう、兄上」 「明日が無事に終わればいいが」 「尊き神のご加護を信じましょう」 その名に祈り、3人は明日を待った。 |
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祭りを無事に終え、数日が過ぎた。 マテウスの懸念通り、クルツに対する目は厳しくなり 「私はともかく、君にまであんな目を向けるなんて」 「大丈夫よ」 クルツとマテウスを信じている。 その心だけは揺るがないよう 「辛くなったら我慢はしないでほしい」 「あなた」 「君も兄も、大切な家族だ」 重なった手はあたたかく、不安がそっと消えていくよう。 「あったかい、、、、」 「リイナ」 (女神様。どうか、信じる強さを) リイナは静かに強く願った。 |
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