


eternal child(U)
自室へ戻ったフィータは、フレデリンクを抱えたままベットへと身体を投げた。
「着替えてからにしろ。、、、気分でも悪いのか?」
「あったかくて気持ちいい。今なら飛べるかな」
「飛ぶ?」
「空へ」
「、、、、、」
「でも、僕には翼がないもんね。駄目か。
本で読んだんだ。空には白い翼を持った綺麗な人がいるって。
だけど、見ることは出来ないんだって。会ってみたいな。
アリエルは、会ったことある?」
起き上がったフィータはアリエルを覘く。紅い瞳に映る影。
「私も会ったことはないよ。起きたついでに着替えてしまえ」
「フレデリック、待ってて。え、、と、どこだっけ」
フレデリックを抱えたまま部屋を見渡す。
毎日同じことの繰り返しだった。
物一つ出すにも、部屋中を探さなければ見つからない。
一度探し出しても、それが何処にあったのかを覚えておくことが出来なかった。
ようやく目的のものを探し出して着替えるとベットにもぐりこむ。
「アリエルとオルガとフレデリックとずっと一緒にいるんだ。アリエル、大好きだよ」
「わかってる。お休み」
フィータはそっとアリエルの膝に手を伸ばす。
その上にアリエルの手が重なった。
(今のお前に、私はどう見えているんだ)
アリエルとフィータの間に繋がりはない。
フィータの親はなかなか子供に恵まれず
諦めて孤児院からアリエルを養子に迎えた。
だが、そう時間をおかずにフィータが生まれた。
幸い、両親は2人を分け隔てなく育ててくれたし
アリエルもフィータに兄として接することに抵抗はなかった。
だが、フィータは先天的な障害を持ち、アリエルを兄と呼ぶことはない。
その意味もわかってはいないだろう。
(お前を守りたいけどな)
フィータをそれなりの施設に預けたほうがいいという人もいる。
今はオルガがいてくれるけれど、それが続くという保証もない。
けれど、フィータの隣にいてやりたいとも思う。
どちらかに割り切ることは出来なかった。
フィータが眠ったのを確かめ起こさないように手を外し、静かに部屋を後にした。
「眠ったか」
「ああ」
リビングに戻り、グラスを満たす。問い詰めてくると思っていたオルガだったが、そうはならないようだ。
「フィータにとって、私は何だろうな」
「、、、どうした」
「ただの、自分の世話をしてくれる親切な相手なのかもしれない。
私じゃなくても、フィータにとっては同じこと。他の誰であっても」
「フィータにとっては、アリエルも兄貴も同じことだろう。
悪いけど、そこまで考えられる子じゃないよ」
「お前が来てからどれくらいになる?」
「、、、、、忘れた」
オルガはグラスを一息で空けた。
フィータの親はこの町で宿屋をやっていた。
両親が他界してアリエルが宿屋を引き継いだが
フィータの面倒までは見切れなかった。
考えた末、フィータの面倒をみることを条件に同居人を探した。
だが、引き受けてくれる相手は簡単には見つからない。
フィータの状態がわかると断りを入れてくる。
やっと見つけた相手がオルガだった。
ただし、オルガのほうからも一つの条件があった。
会う前のことは詮索しないこと。
幸いフィータもオルガに懐き、3人での生活が続いている。
「さて、寝るかな。お前も休めよ。この時期は宿のほうも忙しいだろう」
「これを終わらせてからな。
その前に、フィータが酒を飲んでああなってるのはどういうわけだ」
「(覚えてたか)腹らがへったっていうから食べるものを探してた。
その間に残った酒を空けたみたいだ。こっちの不注意なのはわかってる。
これからは気をつけるよ」
「悪いとは思ってる。フィータに付きっ切りじゃ何もできないだろうから」
「嫌だったら、あの話を受けてはない。気にするな。お休み」
アリエルの返事を待たずに、オルガは部屋を出て行った。
「ずっと一緒か、、、」
それが可能だと、信じて疑いもしないのだろう。窓から外に目を向ける。
夜も遅いというのに町は眠りそうもなかった。