


eternal child(T)
人と物が行きかう宿場町、サルバス。
規模はさほど大きくないが、地方と中央を結ぶ交通の要であることからいつもに賑やかだった。
まして今は祭りの時期。あちこちから見物客がやってきている。夜になっても町は色鮮やかだ。
「何が楽しいんだか」
行きかう人の波を思い浮かべながら、オルガは呟いた。
「、、、ガ、オルガ!」
「ん?うわっ」
呼ばれて振り向いたオルガの顔にクッションが命中した。
持っていたグラスを落とさなかったのは、誉められてもいいだろう。
「何だ、いきなり」
「オルガが悪いんだよ。さっきから呼んでるのに」
投げてきた相手、フィータは口を小さく尖らせる。オルガはソファーへと戻った。
「で、どうした」
フィータは、くまのぬいぐるみのフレデリックを抱えてオルガの足元に座る。
「アリエル、遅いね」
「、、、、、(それだけか)」
フィータは自分とそう変わらない年の同居人。
少なくとも、世間では大人と見られる年齢だった。
だが精神面ではくまのぬいぐるみと無邪気に遊ぶ幼子のころから
時を止めたまま。
先天的な障害で、これ以上の知能の発達はないだろうと宣告を受けている。
そして、義理とはいえ兄のアリエルを「兄さん」と呼ぶことはせずに
名前でしか呼ばない。
時を止めた永遠の子供。それがフィータなのだ。
「僕が悪い子だから帰ってこないの?
オルガとフレデリックと一緒にいい子で待ってれば、アリエル帰ってくるよね」
「もうすぐ帰ってくるよ」
「うん。フレデリック、何して遊ぼうか?本は全部読んじゃったし、、
オルガ、お腹すいた。何かちょうだい」
「探してくるから、ここにいろ」
「はい」
話があちこちに飛ぶのはもう慣れた。食べるものを探しにオルガは部屋を出た。
残ったフィータはオルガが飲んでいた酒のビンを眺める。
「これ、アリエルとオルガがいつも飲んでるよね。おいしいのかな」
グラスに残っていた分をなめてみる。甘くておいしい。だが、アルコールは高い。
「おいし。フレデリックものんでみる?」
脇に座っているフレデリックににこりと笑った。
「、、、、、、」
「おかえり〜」
部屋に戻ったオルガに満面の笑みで手をふるフィータ。
ビンに半分ほど残っていた酒はなくなっていた。
「お前、残っていた酒全部飲んだのか?」
触れた身体は火照っている。フィータはオルガに抱きついたまま離れようとしない。
「フィータ、もう寝ろ」
「やだ。オルガとフレデリックと一緒にアリエルのこと待ってる」
「(冗談じゃない。酒飲ませたなんてわかったら)
すぐに帰ってくるよ。ベットで待ってよう。な」
「何で?」
「それは」
そこに玄関が開く音が聞こえた。
「帰ってきた」
「(今帰ってくるな)」
自分から離れたフィータを押し留める。フィータは不思議そうにオルガを見つめた。
「どうして?アリエルのとこ行っちゃいけないの?」
「そうじゃなくて」
「アリエル、おかえり〜」
オルガを振り切り、部屋へ入ってきたアリエルに抱きついた。
「いい子にして待ってたよ。帰ってこないかと思った」
「遅くなって悪かった。オルガ、先に寝かせてくる。後でゆっくり訊くからな」
「覚悟しとくよ」
「お休み、オルガ」
アリエルに手を引かれて、フィータは自室へと戻っていった。
後から落ちる雷を覚悟しながら、オルガは新しいビンの栓を開けた。