あなたの望みを叶えましょう。どんなことでも想いのままに。

けれど願いが叶ったその時は、あなたの魂をいただきます。


整備の行き届いた大通り。綺麗に晴れた空の下を品のいい男女が行き交う。

だが1本裏手に入れば、そこは猥雑とした入り組んだ下町。

夜ともなれば着飾った女たちが艶のある笑みを浮かべて男を招く。

そんな女たちが囁きあった。

女たちが見ているのは端正な顔立ちをした1人の男だった。

この界隈では初めて見る顔。

すかさず手が伸びるが男は丁寧に返していく。

その仕草が一層女たちをざわつかせた。

1人が消えればまた次が。そんなやり取りが続く。

「と、悪い」

逆から来たぶつかった相手が脇をぬける。その次の瞬間。

「放せっ!」

男が掴んだ手には、財布があった。

「腕は悪くないけれど、狙う相手を間違えましたね。返してください」

「わかったよ。わかったから放せ」

すんなりと財布を返す。

「ここ暫く失敗してなかったのにな」

そう呟く相手をよく見れば、見た目自分より少し下。

弟といえば通るだろうか。

ここで育っているというわりには、垢抜けている。そう、、使えるかもしれない。

「一晩の稼ぎはどれくらい」

「そんなこと訊いてどうすんだ。もうあんたは狙わないよ」

別の相手を探そうと向きを変えたが、もう一度腕を引かれた。

「何だよ。物は返したろう。抜き取るなんてそんなことするか」

「取引をしませんか」

「、、、、、」

「私の頼みをきいてもらえれば
 一日あたり、今までの稼ぎの最高額の倍を払います」

「、、、何なんだ。一体」

めちゃくちゃ怪しい。

一晩の女をかうならともかくスリを相手に何をしろというのだろう。

「道の真ん中でもなんですから、よけましょう」

人の間を縫って脇に寄る。

「人を探しているんです。私は、、まあ何でも屋ですね。
 出来ることであれば、見合うだけの報酬を条件に
 どのような依頼であれ引き受ける。今回は人探しです」

「その相手が俺だっていうのか?」

「いいえ。もう亡くなっていることがわかりました」

「なら、そう伝えればいいだろう」

「信じないのですよ。依頼人は重い病で、最後にどうしても会いたいと。
 7日間、相手をしてもらえませんか」

「要は、身代わりか。そいつを騙せってことなんだな」

「人助けです。騙すことに変わりはないけれどね。
 最後の夢。それで依頼人が満ち足りるなら悪い嘘ではないでしょう」

「それは、、、まあ」

理屈はわからないではない。

だが、この男が依頼人を本気で心配しているようには見えなかった。

よほどの報酬を約束されているのか、それとも他に目的があるのだろうか。

「どうです。受けてもらえませんか」

「、、、いいよ」

自分に対する報酬よりも、この男の目的を知りたくなった。他にあるような気がして。

「私はラクスデル。あなたは」

「俺はイダ。で、いつだ」

「いつでも、イダの準備ができしだい」

「じゃあ、明日。今ぐらいでいいよ」

「わかりました。よろしく」

軽い会釈をして、ラクスデルは人ごみの中に消えた。

「ほんとに人助けなのか?」

得体の知れない何かを、ラクスデルに覚えていた。


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