

予兆
翌朝。
「ん、、、」
久しぶりに眠れた気がした。眠った感覚のないまま迎えていた朝だが今日はいくらかましに思えた。
そしてベットに座り自分を見ている瞳。
「レイス、、」
「眠れたか?」
「いて、、くれたの」
「、、、、」
記憶が定かではない。覚えているのは花を眺めていたところまで。
「昼頃になったら出かけるぞ。そのつもりでいろ」
「どこへ?」
「、、、行けばわかる」
そしていつものように部屋を出て行く。
ガレリアは自分で自分を抱いた。
身体のどこかが覚えていた。
レイスの腕に抱かれていた暖かさ。物ではなく、人として。
ガレリアはそれが夢でないことを願った。
昼を少し回った頃。どこへ行くと告げぬまま、ガレリアを連れてレイスは街へ出た。
賑やかな通りを抜け、一本奥へ入った道の店の前で馬車が止まった。
着いたのは仕立て屋の前。
「お前の服を仕立てるだけだ。こい」
カランと扉のベルが鳴り、奥から出てきたのは店の女主人のアントワネット。
「いらっしゃいませ」
知っている間なのか、親しげに言った。そしてガレリアに目を向ける。
「いつもの注文でいいのかしら」
「ああ」
「何を、、、、?」
「言ったろう、服を仕立てるだけだ。馬車に戻ってるからな」
足早に馬車に戻る。
「どうぞ」
促されて入った店の奥は、色とりどりの布で埋め尽くされていた。
アントワネットは布とガレリアを見比べ、いくつかを取り出す。
「色が白いから何でも映えるわね。一番綺麗に見える色はと、、」
その言葉で察しがついた。
(決まったんだ、、僕を買う人が、、
あの屋敷を出て行く、、、レイスに、会えない?)
涙が落ちた。何の為の涙なのか。売られていくことではない気がした。
それは、最後に浮かんだ思い。 ”レイスと会えない”
「あなた、、」
「、、ごめんなさい」
「そう、、レイスはあなたを手放さないかもしれないわね」
「どうして?だって」
「今までここに来た人たちは、何の反応もなかったわ。
手を引かれてここに来て、言葉なんてなかった。
ただ虚ろに空の一点を見つめていただけ。
心も呼吸すらも忘れたようにね。でもあなたは違うでしょう?
まだ言葉を忘れてない。こうして泣くことができる。
ただの商品として見ているだけなら
こんな状態で連れてくることなんかしないわよ」
「じゃあ、レイスは何でここに?」
「これ以上の答えは自分で見つけなさい」
そしてアントワネットは仕事に戻る。
布選びと採寸が終わるころには、陽が傾いていた。
アントワネットに連れられて店を出る。だが、そこにレイスはいなかった。
「レイスはどこ?」
答えたのは御者役のルディ。
「別の用事で離れています。先に戻っていろとのことなので、乗って下さい」
馬車に乗り込むとルディは急いで戻り始めた。
だが、先ほどの答えに考えを巡らせているガレリアがそれに気づくことはなかった。