生誕祭
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生誕祭当日。 街は蒼と白の光で美しく飾られていた。 「この光景も変わりませんね」 「誰も始まりの云われを知らない。 「どうして蒼と白なんだろうね。ファルアさん知ってる?」 「いえ、私も知りません」 絡瑛は、その色に込められた想いに心を寄せる。 「あ、お花屋さんがきた」 「買ってきましょう」 「うん」 ファルアと愁馬は花をのせたワゴンに向かった。 「兄さん」 「ん?」 「傍らで、同じ時間を共有したい女性はいないんですか」 「な、急に何を」 だが、絡瑛の視線が愁馬に向いていることに気が付いた。 「何をどうすれば愁馬のためなのか、まだ霧の中さ。 愁馬を養子にして彩華月の一員に迎えるのも、選択肢の一つ。 だが、そのためには愁馬が母親と呼べる女性が必要だ。 そしてその女性は 望む望まないに関わらず、名門の肩書は消えない。 「見合い写真は嫌ってほど送られてくるが何をどう判断したらいいのかさっぱりだ」 「難しいけれど、きっといい道が見つかりますよ」 「そう思うか?」 「この光に包まれていると、そう思えてきませんか?」 瑞樹は街を見渡す。 揺れる灯りは、愛し子を抱いているようでもあった。 ならば、この街に生きる自分も 「そうだな。きっと」 「ええ」 「瑞樹さん」 5人分の花を抱えた愁馬が戻ってきた。 「はい。瑞樹さんのお花」 「ありがとう」 「絡瑛さんも」 「私の分まですみません」 「それから、ファルアさんと僕とおじい様の、あ、そっか」 手渡しながら、愁馬は小さく呟いた。 「どうした」 「今年は絡瑛さんが一緒だから一輪なんだね」 「一輪、、、、そうだな」 「兄さん?」 「毎年お前の分も持ってたから、手には2輪あった。 だがそれも、今回限りなのだろうか。 次の生誕祭には、再び2輪の花を手にするのか。 「絡瑛、戻ってくれとは言わないが 絡瑛は愁馬のいい話し相手にもなっていた。 瑞樹の前で飲み込んでいる言葉を、愁馬は絡瑛に向ける。 「絡瑛さん、だめ?」 きゅっとマントの端をつかみ見上げてくる瞳に 「また、近いうちに会いに来ますね」 「ほんと?」 「約束します」 「絶対だよ」 「よかったですね。愁馬様」 「うん」 教会の鐘が鳴った。 献花台の準備が整った合図だ。 「行こう」 先に駈け出したのは愁馬。 ファルアが続き、瑞樹と絡瑛は少し遅れて歩き出した。 「愁馬も懐いてくれたみたいだな」 「気遣いのできる優しい子ですね」 「本当にいい子だよ」 「瑞樹さん、早く」 「今行く」 手を振る愁馬に答えた時、視界の隅にとある人影が映った。 「ん?」 「どうしました」 「あれは、紫」 その名を言いかけて向きを変えるが、知った姿はない。「気のせいか」 「、、、、、行きましょう」 「ああ」 |
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そんな2人の後ろ姿を、優しく見守る眼差しがあった。 「宵の空に浮かぶ銀色の月。蒼と白か。紫水?」 紫水はそっと、キリエに体を預けた。「何だか、こうしていたい気分」 「私たちも、今夜はこの街の住人に戻りましょうか」 「そうね」 息づく全ての命を包み |
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生きとし生ける者 その全てに幸あらんことを ![]()