時の旅路


キエヌと背中合わせに存在する世界。そこは、翼を宿す者が住む世界であった。

黒の双翼と白の双翼。激しく争った時代を経て、今は停戦状態にある。

犠牲を伴いながら、双方のわだかまりがようやく緩み始めていた。

そして、白と黒の両方を統べるのが白銀の翼を宿す者。有翼の頂点に立ち、権力は絶対だ。

白銀の統括、ルトヴァーユは居城から外を眺めていた。

白と黒が住む場所は、有翼の中でも分け隔てられていた。

けれど時折、異なる翼同士を同じ場所で目にすることがある。

この変化は有翼にとっては良いことなのだろう。

だがルトヴァーユには変化に伴う懸念もある。

それは有翼側というより、有翼側とキエヌとの関係だった。

この有翼側で生を終えた命が、時を経てキエヌで目覚めることがある。

本来なら新しい生を得た命。有翼側で生きた頃の記憶は無いはずだった。

キエヌの住人がこちら側を知ることは無いと思っていた。

けれど今、キエヌには有翼の頃の記憶を持って生きている命がある。

記憶と人格を表に出し、キエヌの住人でありながら有翼側と関わり続けている者。

また、悪魔との契約で永遠を手に入れ、有翼と出会い翼を宿した者。

この有翼から居を移した者。

例外も、あまりに数が多いと例外ではなくなる。

今のところは静観のつもりだが
どこまで認めるかの判断もルトヴァーユの責任なのだ。

「カルサイト様、、、あなたが残したものは大きすぎます」

ルトヴァーユの前任、カルサイト。

争っていた頃に眠りにつき、停戦後に永い眠りから目覚めた。

そして目覚めることのない眠りを迎えるまでの僅かな間に、様々なことがあった。

いや、ありすぎたと言ってもいい。その全てを、白銀の翼と共に受け継いでいる。

「そう、、、この翼を恨みはしない。だけど、、、」

もう少しいてほしかったと思う。隣に。同じ立場で話をしてみたかった。

だが、白銀は一人。

今までの白銀も、同じことを思ったのだろうか。

それとも、他の誰かを望むことなどなかったのだろうか。

「同等の立場を望むほうが愚かなのですね」

ルトヴァーユはゆっくりとグラスを傾けた。

知ることの出来ない未来に、今だけのため息をおとしながら。


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