手紙

「ん、、、」

差し込む朝日に目を細める。小鳥のさえずりが気持ちよく届いた。

「レイス、、」

愛する相手を見ようと横を向く。だが

「レイス!?」

そこにレイスはいなかった。部屋には自分独り。

「そんな、、嘘でしょう、だって」

一瞬夕べは夢かと思った。だが身体は覚えている。夢ではない。

ベットから飛び出し扉に手をかける。鍵がしっかりと下りていた。

「レイス!」

拳を叩きつける。鍵が回った。

だが姿を見せたのはルディだった。

「おはよう。急ですみませんが、ここを出てもらいます」

「え、、、」

「あまり時間が無いので着替えだけしてください。荷物はこっちで」

「、、、、どうして」

糸の切れた操り人形のように、ぺたりと座り込んだ。

「嘘だったの、、、?全部?傍に居てくれるって、、、愛してるって、
 レイスだけ、、レイスしかいないのに、、、」

「ガレリア、話を」

「来ないで!」

ガレリアはルディの手を払いのけた。

「何処にも行かない。レイスが僕をいらないなら、もう放っておいて!」

「レイスはあなたを捨てたわけじゃありません」

「じゃあ、どうして?何処にいるの?」

「あなたとやり直すため、過去の清算に行っているんです」

「え、、、」

「この世界にはこの世界の掟がある。けりをつけ行っているだけです。
 彼のこと、信じられませんか?」

「信じたい、、だけど」

信じる術をガレリアは知らない。狭間で心は揺れ動く。

ルディは手紙を差し出した。

「レイスの手紙です。まだ渡すのは早いけれど
 もし戻れなかったら渡して欲しいと、頼まれたものです」

「じゃあ、レイスは!」

「言ったでしょう?渡すのは早いと」

「、、、、、」

「彼のあなたに対する気持ちです。
 迷惑じゃなければ待ってあげてください。
 他の誰が諦めてもあなただけは。読んでもらえますか?」
 

こくりと頷く。

「では、後で」

出て行く足音が遠く聞こえた。手紙を握り締めベットに戻り、そっと開いた。


 レイスからの手紙

               この手紙がお前に届いているのなら、もう会うこともないだろう。
               いつからかも忘れた悪夢。戒めの鎖で縛られ十字にかかり、突き立てられる剣。
               目覚めはいつでも、その感覚を残したままで。
               わかっている。所詮私は罪人なのだ。
               してきたことが許されるとは思っていないし、許しを乞うつもりもない。
               だから、この屋敷に連れてこられる鳥たちを物としか見ないよう努力した。

               丁寧に扱いはしても商品としか見ないと。
               そこにお前が来た。
               始めは同じだった。けれど手放したくないと望んだ。傍らにいたいと。
               歯車のように止まらない、変わることの無い未来。
               それを止めることが出来そうな気がした。お前となら。
               だが叶わない望みだ。私が握りつぶしてきた若者たちの未来。
               それを忘れて私だけが戻るなど許されるはずもない。
               何より私は、お前を傷つけて苦しめてきた。
               私はどうなろうと、お前だけでも戻れるのならそうしたいと思う。
               つかの間の泡沫でも、お前がいてくれたことに感謝するよ。
               ありがとう、ガレリア。お前の未来に可能性が残っていることを願っている。


「ずるい、、こんなの、、、ずるいよっ!」

ガレリアは手紙を握りつぶした。

「僕の気持ちはどうでもいいの?
 僕の言葉を聞いてはくれないの?
 こんな、、、こんな出て行き方、、
 あれが最後だなんて、、嫌だ」

ガレリアは窓を開ける。流れる風に乗り届くよう祈る。

「帰ってきて、、お願い、、、」

屋敷を出たのはそれから間もなくのことだった。














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