再会

都市から少し離れた郊外の屋敷。

「ガレリア」

窓を開け、ぼんやりと外を眺めているガレリアにアントワネットが声をかけた。

「大丈夫?また細くなったわね」

「レイスを待たなきゃ、、、待ちたい、、」

あれからガレリアを送り届けたルディは都市へ引き返し、アントワネットがやって来た。

だがレイスは来ない。季節は巡り、2度目の春。

「出かけてきます」

「気をつけて」


ガレリアが向かったのは街を見渡せる小高い丘。そこには一本の大樹があった。

人々はこの木を約束の木と呼ぶ。想いを遂げた2人が約束を交わす場所。

「どうして、、来てくれないの、、、待ってるのに、、、」

諦めてしまえればどんなに楽だろう。だが心は求める。

声、髪、眼差し、触れた肌。その全てが刻み込まれた心は悲鳴を上げながら夜の眠りについていた。

「綺麗でしょう、、、白い壁に当たった光がきらきらしてる」

涙が止められない。

「レイス、、何処にいるの?このままじゃ、、壊れるよ、、」

うつむいた顔の前が不意に翳った。そして届いた声。

「ただいま」

それは懐かしい声。待ちわびた声。

「レイス、、、、?」

虚ろに呟く。

「ああ」

空耳ではない。確かに聞こえる声。

「どうした、待っていてはくれなかったのか?」

「し、、知らない。どんな思いで、、レイスなんて、、、知らない」

顔を上げることが出来ずに、そのまま言い放つ。

「そうか、、嫌われたか、、すまなかった。、、さよなら」

「待って!」

上げた顔の前にレイスの眼差しがあった。

「ただいま」

「レイスのばか!」

胸に顔をうずめ、そして泣いた。

この一年の思いをぶつけるように、吐き出すように。

「そんなに泣いたら、目が溶けるぞ」

「誰の、、せいだと、、」

ガレリアの拳がレイスの胸を叩く。

と、レイスが低くうめいた。

「レイス?」

「、、つ、、あばらを折って、動けるようになったばかりなんだよ」

「それを先に言ってください!」

身体を離したガレリアを今度はレイスが抱き寄せた。

「会いたかった。お前の夢ばかりみていた。
 抱きしめて、髪に触れて、、
 いくら耳を塞いでも、お前の声ばかり聞こえてきて、、、
 腕の中にお前がいる、、、本当にいるんだな」

「夢じゃない、、、夢じゃないよね。夢なら醒めないで」

「信じさせてやる」

唇が重なる。

約束の木。その誓いを立てるように。


「レイス、、」

「ただいま。ガレリアが世話になったな」

「よかった、、本当にあなたね」

確かめるように頬に手を伸ばす。その暖かさを胸に止め、アントワネットは手を離した。

そしてガレリアに目を向ける。

「よかったわね。待っていたぶん、うんと甘えなさい」

「あの、、え、と、、」

どう返したらいいのかわからずに、うつむいて頬を赤くする。

「あたしの役目も、これで終わりね」

「え、、、」

ガレリアは顔を上げた。

「出て行くんですか?」

「レイスが戻ればあたしがいなくても大丈夫でしょう。幸せに、、、なりなさい」

それは勘だった。同じ相手を同じように愛している者同士。

「じゃあ、荷物まとめるからまた後で」

その後姿を見送り、レイスを見る。

「いいの、、このままで。僕は、、いいよ」

「ありがとう」


「いいのよね、、これで」

荷物をまとめていた手を止め、アントワネットは呟いた。

幼い頃に出会った、空に憧れていた少年。

結局は、レイスもあの屋敷に囚われた鳥なのだ。

飛び立つときに傍にいたいと望んだけれど
レイスが求めたのは自分ではない。

零れ落ちそうになる涙を必死でこらえる。

そこに、声がした。

「アントワネット」

「来ないで」

だが声は近づき、背中から抱きとめられた。

「馬鹿、相手が違うでしょう」

「ありがとう。感謝してる」

「いいわよ、、、もう。
 ガレリアのこと泣かせたら飛んでくるからね」

「大切にするよ」

交わしたのは微笑みと口付け。

最初で最後だろうと、お互いに思いながら。



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