黒水晶 〜 オニキス 〜 の姫君


いよいよ祭り当日。

「今日か、、、、」

どんな結果になっても精一杯やるだけと、キュリオは快晴となった空を見上げた。

ただ一つ気がかりなのは、シャルミラがあのコンテストを見に来ないかということ。

「興味があるとは思えないけど、、、、どうか、気づかれませんように」

胸の前で手を組んで、真剣に祈った。


自分の部屋を出たキュリオはリビングへ入った。

「今日はゆっくりでしたね」

いつもと同じ、シャルミラの穏やかな声がかかる。

「うん、、、あの、ランスのところ行ってくるね。
 日が落ちる前には戻れると思うから。
 遅くなりそうだったら、ちゃんと連絡する」

「キュリオ」

言うだけいって向きを変えたキュリオを
シャルミラは呼び止めた。

「、、、、、」

「何かあったんですか?
 ここ暫く、部屋にこもってばかりでしょう」

「、、、、ごめん」

「謝ってほしいのではない。私が手伝えることなら−」

シャルミラは途中で止めた。

キュリオにとって、何でも話せる絶対の信頼がおける相手。

それは、己の思い上がりなのだろうか。

思っていること全てを無条件で話せるなど。

だが、そうだとしても態度が変わる理由にはならない。

変わらずに隣で見守ること。選んだのは自分なのだ。

「いえ、何でもありません。暗くならないうちにね」

「シャルミラ、、、、」

「何かに迷っていて、自力で解決しようとしているのなら
 あえて手出しはしません。ただ、忘れないでください。
 私はいつでもここにいる。手の届く場所にいますから」

「、、、ありがとう」

キュリオはシャルミラを抱きしめた。

「シャルミラがいてくれるから、僕もこうして存在してる。
 シャルミラがいなかったら、僕もいないよ」

「キュリオ、、、、」

「向こう側で手を差し伸べてくれた時からずっと
 僕の居場所はシャルミラの隣」

「これからも変わりません」

「うん。行ってくるね」

「気をつけて」

優しい春の陽だまりのような暖かさ。

そんな微笑で、キュリオの後姿を見送った。


町は華やかに飾られ、大勢の人で賑わっていた。

普段でも人の多い通りが
更に上をいく数で埋め尽くされている。

「すごい、、、、、」

祭りの日に町に出るのは初めてだった。

半ば呆気にとられて見ていると、くいと腕を引かれた。

「ほら、また真ん中でぼ〜っとして」

「アクアさん」

その相手はアウラクア。

「コンテストの前に怪我でもしたら
 それこそ台無しだ。さ、行こう」

「は、はい」

人の間を掻き分け、2人はランスの店に入った。


「こんにちは」

「いらっしゃいませ」

「いよいよですね。頑張って、キュリオ様」

「、、、うん」

何をどう頑張ればいいのかよくわからないが、ここまでくれば後は本番を迎えるのみ。

そして数時間後、いよいよコンテストが始まった。


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