

セラフィスの言葉のとうり、天界の役目に支障が出始めたのは、それから間もなくのこと。
天界からの出立が滞りだし、魂が意志を持ち始める。それは苛立ちから怒りへ、そして憎しみへ。
暴走を始める前に止めなめれば、全ての世界を巻き込んでしまう。
「そろそろですか、、閣下、カルラさま。どうか、お守りください」
祈りを捧げ、部屋を後にする。そしてミゲルとヴァリティーエが加わり、3人は冥府の門の前に立った。
「気をつけて、、、」
リリスが伝えるその一言が、どれだけ重いのだろう。
泣き叫んで引き止めることが出来るならそうしたい。
けれど、それは許されないこと。
「戻ってきたいけれど、約束は出来ません。もしその時は、、お願いします」
「、、、わかってる。それが私たちの役目だもの。
セラフィスがしたいことは、私もしたいことだから」
「帰します」
割って入ったのはヴァリティーエ。
「私と引き換えてでも。お2人を離しはしませんから」
それは叶わなかった自分の願い。2人に託すかのように。
「誰かを犠牲にするのではなく、全員で戻りましょう」
簡単なことのようにミゲルが言った。そう信じられる、暖かな声音。
そして、その姿が扉の向こうへと消える。
リリスは統治者が眠る霊廟へと向かった。
先代ジルファールの前で、3人が無事に戻ることだけを祈った。
天界。目の前の風景は追われたときと変わらない。だが、あまりにも静かだった。
全てが眠っているかのように、不気味なほどに。
出立を待ちきれなくなった魂が集まるとしたら、そこは宮の最奥出立の門。
奥に浮かんで見える宮を見据え、ミゲルが言った。
「行きましょうか。目指すは最奥出立の門。あそこだけは、破られるわけにはいかない」
ふわりと身体を浮かせ3人は宮を目指し羽ばたいた。
侵入者を察知した魂が意志をもって迎え出る。それは絶望、怒り、哀しみ。
もやのような塊をよけながら、門のある部屋へと突き進む。扉を抜け封印を落とし、ようやく一息ついた。
「ふう、、」
「あ、、、」
小さな呟きが届いた。数人がその門の前で守りについていた。だが追い出した後ろめたさか、それ以上の言葉がでない。
ミゲルは門の前へと進み、まだ傷ついていないことを確かめると大きく息を吐く。
「よかった、、、」
そして、門を守っていた者に優しい笑みを向けた。
「よく、守ってくれましたね。ありがとう。礼を言います」
その言葉に、全員が体制を立て直した。
「もったいない仰せでございます」
それは、精一杯の言葉。
ドン 部屋の扉が鳴った。
「話ができる状態ではなさそうですね」
セラフィスが扉を見つめる。
「散らせるしか、、ない、、」
2人の表情が厳しくなった。2,3人分ならまだしも、数が多すぎた。
体力と精神力をどこまで使うか予測がたたない。が、それでもやるしかない。
「ヴァリティーエ、結界は張れますね」
「はい」
「門と、ここにいる皆を囲んで結界を張ってください。
私とセラフィスで、向かってきている魂を散らして無に還します。
酷な頼みだとは思うけれど、、、もしもの時は後のことお願いします」
「閣下!」
また自分だけが残される。それは何よりもの恐怖。
「では、私も」
「魂を無条件で散らせる行為は統治者にのみ受け継がれる特権。
私たちが統治者である以上、しかたのないことです」
ドン 扉が軋む。
「戻ってきてください。お願いです」
「、、、努力はしましょう」
ミゲルが離れる。セラフィスとミゲルは扉を見据えた。
「命の理を司る者ととして、今ここに力の解放を望む」
「荒ぶる魂に安らぎを、無に還し散らせることをお許しください」
2人の前に青白い光が浮かんだ。
低い詠唱が続き、それに応えるように軋む音が大きくなる。
バン! という音と共に扉が破られた。
身の丈ほどの影が2人に向かって突進する。
影に向かい2人は光を放った。
この2つがぶつかりあった瞬間
「くっ、、、」
目も開けられないほどの光が生まれ、爆風が部屋を破壊する。
ヴァリティーエは歯をくいしばりながら結界を押さえ、そして音が消えた、、、