「そう思ってくださるなら
 何とか仰っていただけませんか?」
多少の抗議も含んだつもりだったが
気に留める様子も無かった。
「それは時間の無駄というものよ。
 他者の言葉で動くジルではないもの」
「、、わかってます。言ってみただけです」
「まあ、気持ちはわかるけど
 そう投げやりにならないで。
 ジルが誰かを信頼するなんて事、滅多には
 ないんだから」
「、、、、」
「それに、2人のやり取りって面白くも
 あるのよね」
「お2人で楽しんでますね」
「少しだけね」
「、、、(はあ、、)」

こうして冥府の一日が始まる。
「まったく、、、」
遠ざかっていくその後ろ姿を
多少恨めしげに見送った。

「あなたも苦労するわね」
2人のやり取りを黙って見ていたイリアーナが
くすくすと笑いながら声をかけた。
ジルファールの花嫁であり
この冥府の女主人でもある。
だがジルファール以上に
統治にかかわることをしようとはしない。

放っておけばいいと思わなくもなかったが
それもできない自分の性格が恨めしくもあった。
 
「本日冥府へ入る魂の集計です。
 それによりますと−」
「お前に任せる」
「、、、今何と」
「お前に任せると言ったんだ」

そしていつもの会話が始まる。

「それで済むことではありません」
「だが、お前は私を手伝う為に来たんだろう?」
「ええそうです。
 手伝う為であって閣下の肩代わりではないと
 最初に申し上げたはずです」
「だがお前の方が早く片付けてくれる。
 他の者に任せられることでもないしな」
「ですから、他の者に任せるというお考えが−」
「運が悪かったと思って諦めてくれ。
 とにかく任せる」
「閣下」

再生を待つ魂が眠る地、冥府。一日の始まりは冥府へとやってく魂を集計することから始まる。

性別、死因、魂がもつ生前の記憶。セラフィスはそれらを手早くまとめると一息ついた。

本来なら、これは統治者であるジルファールの役目だった。

だが、ジルファールが半ば役目放棄なのを見かねて
冥府とは対極な存在である天界から使わされたのがセラフィスだ。

つまりセラフィスは、手伝うことが役目なのだが、いつのまにか任せられっぱなしになっている。

(どうしたものか、、、)

諦めにも似たため息をつくと、セラフィスはジルファールの元へと向かった。


いつものように話を打ち切り、ジルファールはその場を後にした。




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