口封じ


*銀灯華を未読の方は、先にそちらをご覧ください


「闇戯様、お出かけですか?」

広い館はしんと静まり返っていた。

捨て去られた里に住んでいるのは、自分と闇戯の2人だけ。

自分の声や足音がこんなにも大きいものだったかと思う。

「お出かけかな、、、」

やはり出かけたのだろう。

この間に、部屋を飾る新しい花を探しに行こうか。

そんなことを考えながら視線を移した先に、闇戯がいた。

「闇戯様、こちらでしたか」

背中を向けて椅子に座っている闇戯に声をかける。が

「、、、闇戯様?」

呼んでも返事がなかった。

「どうなさいました。どこかお加減でも」

具合が悪いのかと、ジャステアは前に回りこんでみる。

すると、闇戯は眠ってしまっていた。

「、、、、寝顔なんて初めてかも」

かつては戦場が生きる場所だった。

眠るにしても、緊急事態に対処できるよう構えを残してたものだ。

うたた寝をしている姿など初めて見るかもしれない。

「闇戯様、お休みですか?」

「、、、、、」

「あの時、闇戯様が止めた言葉をお伝えしてもいいですか?」

器を与えられ、この地に初めて来た時に闇戯が止めた言葉。

先をわかって止めたのだろうか。

今なら伝えられなくても言葉には出来る。

「、、、、お慕いしています。ずっと、闇戯様だけを」

争っていたあの頃、常に隣にいた。

死別の時の約束が叶っている今を、失いたくない。

「いつか争いの無い時代で会おうと言ってくださった。
 それが叶っている今、私はただあなたと共に在りたい。
 闇戯様、、、、」

ジャステアは閉じた奥の深い蜜色を思う。

その瞳は、この地で自分だけを見てくれている。

「私は、あなただけのものです」

ジャステアは闇戯にそっと口付けた。

「掛けるもの、お持ちしますね」

眠っている闇戯を起こさないよう、静かに離れた。

その音が消えたところで闇戯は目を開けた。

「これ以上ない口封じだな、、、、、まったく」

ジャステアは自分を慕っているという。ならば、自分は?

ジャステアに対する感情は何なのだろう。どう思っているのかと訊かれたら?

どう言葉にすればいいのか、闇戯はわからなかった。

「今はまだ、、、、答えを求めないでください」

瞳を閉じると、思考を止めて再び風に吹かれる。静寂だけが、舞い降りた。


   BACK